にゃんた さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
長井監督の手腕
確かにオリジナルで面白いとは思ったが、冷静にストーリー「だけ」に着目するならば、
個人的にそこまで感動できるようなものだとは思えない。
扱う題材が重いものなので、本当に感動するためには、
それ相応の深い(又は大きい)メッセージ性、確かな説得力が必要だと思うが、
その点は感じ取れなかった(詳細は後述)。
・・・と、こんなことを言いつつも、なぜか深く感情移入してしまった。
それは長井監督の手腕なのだと思う。
演出、音楽、セリフ内容、背景画、それぞれの組み合わせとタイミング。
これらが絶妙だからこそ、キャラの心情が視聴者の心に直接入ってくる。
キャラと一緒に笑ったり、怒ったり、泣いたり、感動したり・・・食べたり寝たり走ったり。
そういう気分にさせてくれる。
そういえば、長井監督の「とらドラ」「超電磁砲」ともに素晴らしい作品でお気に入りなのだが、
やっぱりストーリー自体は王道・ベタだったと思う。
それでも、心に響いて何度でも観たいと思える。観るたびに感動する。
本作品も同じような位置づけになる気がする。
冒頭で「ストーリー自体は・・・」と不満を書いたが、考えてみると、
長井監督の演出に、深すぎるメッセージ性は有害なものなのかもしれない、とも思う。
理解できれば深くて納得・感動できる主張であっても、分かりづらさは感情移入の度合いを下げるものでもあると思うから。
そう考えると、本作も、このストーリー内容で良かったのだとも思う。
今後、長井監督がメッセージ性の強い作品を手がけたらどんなものになるのか、興味がわいた。
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以下、ストーリー内容について気になった点を書きます。
{netabare}本作のストーリー、他の方が書いておられるように、
切なさ、哀しさ、友情、成長などの要素を上手くまとめた素晴らしいものです。
各登場人物がそれぞれの想いを抱え、仲間とぶつかり合い、自分と向き合いながら、
最後はそれぞれの答えを見つけ、前を向いて歩いていく。
これが本作の主題だと思われますし、これをメインに表現していたのも納得できます。
演出に優れた本作では、これだけでもう大満足。
胸もお腹もいっぱいになれました。
しかし、個人的には10代の恋愛感情・精神的な成長という要素よりも、
家族愛や、生命についての倫理観などの要素の方が重く、
深みを感じます。
そのため、
めんまの死の場面に直面した「ぽっぽ」の葛藤。
「じんたん」に愛を注ぎたくても注ぐことができなくなる母親の哀しみの大きさ、息子への愛情の深さ。
傷ついた「じんたん」のすべてを受け入れて見守る父親の、静かな愛の示し方。
これらの要素が、めんまについてのエピソードと同じくらいに前面に出てくるストーリーが良かったです。
これらを強調したとしても、作品全体に漂う(秩父の空気や水のような)爽やかなイメージは維持できたと思うのです。
私には、最後にじんたんが流した涙の半分は、こちらの要素から来るものだと思えるのです。
(以下、6月27日追記)
もっとも、原作が、生命についての倫理観や家族愛を、サブテーマ程度の扱いにしていたかどうかは不明です。
以上のように私が感じた「ストーリー内容」の不満点も
結局は「長井監督によって演出されたストーリー」から感じ取った訳で・・・。
ですので、この不満は、実は演出に対するものなのかもしれません。
岡田さんに聞くしかないのかもしれません。{/netabare}