「屍鬼[シキ](TVアニメ動画)」

総合得点
78.1
感想・評価
1461
棚に入れた
7830
ランキング
578
★★★★☆ 3.7 (1461)
物語
3.9
作画
3.5
声優
3.6
音楽
3.6
キャラ
3.6

U-NEXTとは?(31日間無料トライアル)

ネタバレ

にゃっき♪ さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 5.0 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

Let The Right One In

怖い作品というより、ひたすら悲しく、自己の選択を考えさせられる作品。
最初は山奥の村とミスマッチな、奇抜すぎる髪の色や髪型に抵抗があるかもしれませんが、登場キャラクターがやたら多いため、区別するための記号だと理解して欲しいです。
前半はホラーミステリーで、屍鬼の存在が明らかになってからは屍鬼と人間の戦いがメインになりますが、人間が種の存続を脅かす敵を撲滅するために、単純に戦うだけの物語ではありません。
残酷な描写も多いので強く視聴をお薦めは出来ませんが、屍鬼に対してどんな対応をするかという人間側の視点だけでなく、自らが屍鬼となった場合の事も考慮して視聴して欲しいと思います。

屍鬼たちは彼らの居場所、彼らだけの社会をつくろうと閉塞感に満ちた村を選び、仲間を増やしていきます。彼らは生きながらえるのに人の血液を必要とする不老不死のヴァンパイアで、住んでいる人に招かれなければ、その人の家に立ち入ることは出来ません。屍鬼は一度は亡くなって生き返った者たちで、人間だった頃の記憶も感情も残っているのですが、もと人間だった頃に住んでいた自分の家に帰ることも許されないのです。

屍鬼になって甦った事をどのように受け止めるかも人それぞれです。
屍鬼となって初めて生きる理由を見つけた女子高生の清水恵。田舎を嫌い、村を出たがっていた彼女は、不老不死の身体を喜んで受け入れます。
家族と離れることに耐えられず、自分の夫や息子も屍鬼の仲間に引き込もうとしてすべて失敗に終わる安森奈緒。蘇生するのは数人に一人。誰もが生き返り屍鬼になるわけではないのです。
最初は生き血を吸うことに抵抗があり良心の呵責にさいなまれても、徐々に馴染んでいく者が多いなかで、最後まで吸血を拒否した看護婦の国広律子、彼女のおかげで尊厳を取り戻した武藤徹。寄り添う彼らの胸に突き刺さった杭はあまりにも悲し過ぎます。

意思の疎通も可能な、屍鬼となった知りあいや家族に向きあった人間側も選択を迫られます。
医師の尾崎敏夫は屍鬼の弱点を解明するために、屍鬼になった自分の妻に神経の切断や農薬を注射する人体実験を行い、その存在を白日の下に晒して屍鬼撲滅の行動を起こしたリーダーです。凄絶かつ残酷な屍鬼に対する人間側の反撃の末に残された屍の山と廃墟と化した村。これを人間側の勝利と単純に喜んでいいものでしょうか?
僧侶で作家でもある室井静信は、一度は自分を否定し自殺未遂した過去を持つ、心の闇を知りつくした人物です。幼いまま屍鬼となった彼らのリーダーの桐敷沙子との交流を通じて、屍鬼との共存を考え、協力する道を選びます。しかし結局は自らも屍鬼となり、沙子を助けるため酒屋の主人を手にかけた事で、人間を裏切って屍鬼側に寝返った印象が強く、沙子と逃亡するラストはとても後味が悪いものになったように思います。種の違いを乗り越えた共存の模索こそ意味ある選択だったのではないでしょうか?

屍鬼となって甦り家族の元に戻って来ますが、家族に対する吸血を思いとどまり涙する年老いた母親。彼女にわずかながらコップに溜めた自らの血を与え、二人だけで静かに生きていこうと願うドライブインちぐさの矢野加奈美。それさえ許さない人間たちには、何ともやるせない気持ちにさせられてしまいました。

投稿 : 2013/07/23
閲覧 : 350
サンキュー:

40

屍鬼[シキ]のレビュー・感想/評価は、ユーザーの主観的なご意見・ご感想です。 あくまでも一つの参考としてご活用ください。 詳しくはこちら
屍鬼[シキ]のレビュー・感想/評価に関する疑問点、ご質問などがございましたら こちらのフォーム よりお問い合わせください。

にゃっき♪が他の作品に書いているレビューも読んでみよう

ページの先頭へ