ろき夫 さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
一人で観ることをオススメします。
公開から三ケ月以上経ってるのに凄い盛況でした。
細田守監督作品を劇場で観るのは初めてでしたが、その混み具合はかつてのジブリを彷彿とさせるものでした。
今の世代の子供だと宮崎駿よりも先に名前が出てくるかもしれませんね。
【簡単な内容】
オオカミ男の夫に先立たれ、女一つで子育てに奮闘する母『花』とオオカミの血を受け継いだ子『雨と雪』の愛と絆の物語。
「サマウォ」よりも「時かけ」好きの私としてはこのキュンキュンさせてくれそうな展開に期待せずにはいられませんでした。
まず驚いたのは風景画。劇場作品となると皆気合入ってますが
都会の風景は実写さながらのリアルさで冷たさえ感じるのに対して
田舎の風景は鮮やかな色彩でどこか温かみのある綺麗な絵。
ただ繊細に背景を描き込むだけではなく、質を変えることで場面の空気も上手く表現されてました。
またCMでもおなじみだった雨と雪が雪原を無邪気に駆けまわるシーンは見事で
様々な‘しがらみ’からほんの一瞬でも解放された親子の解放感をどこまでも広がる真っ白な雪原が表現し、寒い冬の季節に響く親子のじゃれ合う声が温かく感じられる。とても新鮮でほんわかする場面でした。
ストーリーに関しては、子育ての経験の無い私にはやっぱり少し遠くのことに感じました。
子育てって大変なんだなぁ…とか(笑) なんか申し訳ない気分に。
それでも、愚痴一つこぼさず懸命に努力する母の姿には胸打つものがありました。
似たような境遇の方だと本当の意味で共感出来るかも知れませんね。
ただ不満を一つ挙げるならば、花が良い人過ぎやしないか?ということです。
子供がどれだけ騒ぎ立てても決して怒鳴ったりはしません。不快な表情さえ浮かべません。
彼女にとってそれが子育てを上手くやる術だったのかも知れません。
でも終盤で雨のとった行動には一瞬だけでも腹を立てて欲しかった。心の奥底の素直な感情を吐き出して欲しかった。
あれが子供の幸せの為だと、夫と二人で誓い合ったことだとしても。頭では理解できていたとしても。
『バカヤロー!!』くらい叫んで欲しかった。そしたらたぶん泣いてた。
女一つであんなに苦労して育ててきたのに。とても苦しかったはずなのに。
人間が出来てるから、母として器が大きいからなのか。子育て経験の無い私には所詮理解できないのかもしれません。
子に対する当たりの良さが他人行儀に見えたりして親子の絆というものが感じにくく、感情移入しづらくなっていたと思います。
なんでこうも良い人かなぁ~と観てるこっちが煩わしさを感じてしまいました。
それでもやはり演出は凄く良かったと思います。
つい魅入ってしまったのは、{netabare}雪がオオカミだと男の子に打ち明けるシーン。
風になびくカーテンの揺らめきを上手く利用して雪の心情を美しく表現していた。
カーテンが最後に彼女を覆っても人の姿のままだったのは人間として生きていくという決意なんでしょうね。{/netabare}
とても切なくなるストーリーでした。
子供でも安心して観れるような宣伝に反して、割とシビアな物語。
なので、親子連れやカップルも多くいましたがこれ微妙な空気になったんじゃないですかね。たぶん。
ちなみに隣の席の子供は「父さん、もう帰ろう」と言ってました(笑)