退会済のユーザー さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
文系男子の憂鬱
文化系部活動が活発なことで有名な進学校・神山高校で「古典部」という廃部寸前の部活に入部した男女4人が、学校生活に隠された謎に挑む。人が死なないミステリー。
・葛藤を描く青春ミステリー
この作品の読み解き方は少し特殊で、ミステリーを楽しむと言うよりお話に込められた意味を読み取っていく類のもののようです。
多くのお話は青春時代に抱く不安やら葛藤やら人の心をテーマにしています。これを青春時代を送る主要キャラの心情へと鮮やかにリンクさせていく。ミステリーを通して登場人物の心情を徐々に浮かび上がらせていく構成は、とても特徴的で素晴らしかったと思います。8〜11話の『愚者のエンドロール』がかなり出来が良く、最終話の『遠まわりする雛』は締めとして完璧でした。
・期待するものされるもの
原作の「氷菓」「愚者のエンドロール」「クドリャフカの順番」「遠まわりする雛」にある話を時系列順に並べたらしいですが、いずれも関連したテーマを持っていて、一つの作品として成立しています。ミステリーとしては文化祭編「クドリャフカの順番」はイマイチでしたが、本作のテーマの一つである「期待」を丁寧に描き、ラストへの伏線としているところはなかなかもの。「氷菓」の古典部の過去を探るお話、「愚者のエンドロール」の試写会のお話も、文化祭の話に繋げてくる辺りは凄いですねぇ・・・・間に挟まれる短編(?)は玉石混淆です。くだらねー話も結構ありますが、中には意外に重要な話もあります。
・キャラとか
キャラ自体はラノベっぽいのですが、仕草・表情や台詞から読み取れる繊細な心情描写があり得ないぐらい緻密です。モラトリアムに生きる若者の心をよく捉えていると思います。
主人公の折木は推理には頭の回る青年ですが、深い人間関係を築くことが苦手。責任を負うことも恐れているが、同時に薔薇色の青春への僅かながら憧れもあるんですなぁ。そして、ヒロインのえるが折木の壁をしつこく打ち砕いていく(笑)えるの期待は他の者とは違って純粋な好奇心に基づくもの。その期待に応えていく内に折木の心にも変化が生まれていきます。そしてえるも自分に欠けているものを見つけてしまい・・・と、まさにテンプレですが、本当にこれが良いですね。他のキャラも同様に繊細な人物描写で、全編通して非常に細密に心情を表現出来ていると思います。
・まとめ
ミステリーとして見るなら大した作品ではないのですが、ここに青春時代の複雑な心情が絡んでくるのが見物。作者のスタンスが滲み出ているお話もあり、かなりよく練られた作品。
裏で全てを操ってる姉貴の素顔が明かされないのは笑えましたが、あれは折木とっての遠い遠い大人像を意味してたのかもしれませんね。
伏線に隠喩にと大変よく出来ていたのですが、テンポが悪いところや、情報の提示の仕方に少し問題があるかなと。要するに少し引きが弱い。じっくりと見れば楽しめるのではないかと思われます。