たんたんたぬき さんの感想・評価
4.7
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
浦沢マジック
浦沢直樹の一番の魅力と言えば、数話完結の小話みたいのが一番面白い気がする。脇の人間のドラマが面白い。この作品は全体の話がかなりスローな始まり方で始まる。元ネタの逃亡者のスタイルをとってるから多分進まないんだと思う。徐々に見えてくるヨハンの像。これを数話完結の話を組み合わせる事で進めていく。本筋からはかなり薄い物語が多い。でも面白い。マスターキートンで培った数話完結の話作りが綺麗に出ている。ここに大きな話しの伏線をぶち込んでいく。こういった作品のスタイルは小説ではありがちだが、漫画アニメではやりにくい。初期に読者が飽きてしまうから。それを数話完結のドラマで見事に補ってそこに全体の話しの伏線を張っている。ストーリーテイラーといてヒット作品を作るだけの事はある。浦沢直樹の話作りは退屈させない。人間ドラマがあまり好きじゃない人はそれほど高い評価にならないかもしれないけど。前半の数話完結の人間ドラマがかなり面白い。
ただそれらは特に優秀な部分を上げただけで、賛否両論の部分の面白さはやはりこの先どうなる?の期待の持たせる浦沢マジックこそ本当の売りだとは思う。ただこれは20世紀少年もそうだけど、どうも期待をインフレさせすぎていつも期待バブルがはじけて終る感じが強い。しかし20世紀少年は漫画だけど、比較としてそのはじけたがあまり無いモンスターが必然的に高く評価できる。この浦沢マジックと似たものとしてアニメオリジナルで言えばエヴァンゲリオンが一番適当だともう。スタートの期待は何が始まるんだ?のワクワク感で一杯。ただ20世紀少年よりはそれなりに面白くまとまってると思う。
何故終りがやや微妙だったかと言うと、始まりはサスペンス的娯楽作品として始まったけど、終わりはヨハンと言う悪を描くテーマ性の様なものを出てきたから。神の対極と悪魔がいて、そういった抽象的な悪をえがかなくいけなくなってそれが究極と言う定義をもつものだから、どうしても不満が出るんだと思う。結局ヨハンと言うのは底が見えない故の怖さこそが売りであって、その底がどういうものであるか?を描く事は文学としては重要でも娯楽としては蛇足だと言う事になる。一番分かりやすい例がガンダムのニュータイプだと思う。浦沢自身は満足してるようだが、富野監督はあんなの期待だけ持たせるだけの小道具だったと白状している。思わせぶりなキーワードこそが目的であり、ヨハンもそうやって与えられたキーマンだっただけだったと言う事になる。前半と後半でヨハンの与えられた役目が変わってしまったと言う事かと。
浦沢の描く良心的な主人公はいつも惹かれる物がある。不思議と鼻に付く善人臭さが無い。全体的に暗い流れが続く話しの中で天馬は癒しを与えてくれるような気持ちになる。全くストーリー展開派違うけど、どこか夏目友人帳と良く似た部分がある。