cross さんの感想・評価

3.2
物語 : 3.0 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態：観終わった

テーマや方向性は理解できるが、感情移入が困難で非常に薄い内容に感じてしまった……【総合評価：64点】

2012年夏に13話の放送があり、後に4話の放送があった全17話の作品。

高校生男女五人が突然起こった異常現象を機に各々のトラウマと向き合ったり、他者との距離感に対して葛藤していくと言う青春物語
原作未読なので、詳しくは知らないのですが、アニメでは３つの現象に直面します。

①人格入れ替わり　　《ヒトランダム》
主要キャラクターを視聴者が把握しきる前に人格入れ替わりが起こるので、最初はかなり戸惑いましたね。
そして、ある意味この作品の重要項目である各々のトラウマに対しては心情描写が深く描かれていないのが難点でした。
心情描写が不足、トラウマを伏線的にチラつかせると言う手法も十分に行えていない。
そんな段階で突如深刻にトラウマを語られても、視聴者としては感情移入が難しいですね。
台詞回しや、キャラクターの考え方がかなり青臭くて、リアリティが足りないと言うのも感情移入を難しくしていた要因かも知れません。
結局、感情移入も出来ないうちに薄っぺらい解決を迎えてしまうので、結局、各々が抱えているトラウマが軽い印象を受けてしまいました。

シリアスなパートにおいては以上の様に薄い内容ですが、まぁ序盤のコメディ要素では人格入れ替わりネタをそれなりにうまく使えていました。
何だか、シリアスに持っていくのではなく、在り来たりな作風になってしまうがコメディ系統に展開した方がまだ良かったかも、なんて思ったり思わなかったり……

あと、人格入れ替わりの際、それぞれの声優が中身の人格のキャラを演じるんですが、その点に置いては声優の頑張りが感じられました。


②欲望開放　　《キズランダム》
キャラクターの精神状況の触れ幅に若干の戸惑いを覚えてしまいましたね。
そして、登場人物たちがあまりにも異常現象に対して冷静に受け止め過ぎている節がある。
確かに打開策なんてあるのかと問われると無いんですけど、あまりにも素直に現象に向き合いすぎている。
そんな無駄な精神力があるにも関らず、精神状況の悪化していく様は不自然に思えた。

それと欲望開放における対策も何だか微妙、簡単に言えば『欲望開放したくないと言う強い意思(欲望)で欲望を押さえ込む』
いやいやいやｗｗｗ
それは普段の人間が有している『理性』と言うものであって、それが出来ないのが欲望開放なんじゃないのかよｗｗｗ
こんな理論で精神的に追い詰められていたキャラは結局欲望開放を乗り越えちゃったｗｗ
正直、この展開の安っぽさには呆気にとられてしまいました。

あと、兎に角この欲望開放に関しては、キャラクターの台詞が臭さがより際立っていた。
幾らなんでも高校生にもなって、まるで小学生に対する教えのような理想論ばかり捲くし立て、重苦しい友情を押し付けてくると言う光景は気味の悪さを感じずに入られなかった。
この気持ち悪い友情論が人間関係の悪化を最小限にとどめていたのは間違いないが、自分としてはどうしようもない人間関係の悪化から人間関係を再び修復する様を求めていたので残念
あの程度の人間関係の悪化に留めていたのでは、解決での振り幅が少なすぎて、心を打つような事は出来ないと思いましたね。


③時間退行　　《カコランダム》
個人的な感想としては本作で一番微妙な部分だった様に思えますね。
一人のキャラクターを除いて、残りメンバーがランダムに過去の姿に戻って、当時の記憶を鮮明に思い出していく。
幼い頃と現在のギャップに戸惑いを見せながら、過去があって現在の自分を形成しているのだから、その過去を否定する物ではないと学ぶと言う展開。

正直、TV放送でラストになる物語としては非常にお粗末、ラストに暴力を振るう父親問題と言う緊迫した問題の解決がネタみたいな解決を迎えた時は目が点になりましたよｗｗ
今までの人格入れ替わり、欲望開放は感情移入が出来ない致命的欠陥はありますが、それなりにシリアスな空気の中解決に持っていっていたのに、まさか最後にこんな冗談みたいな展開とは……
まぁ、その前の過去をやり直したいか？と言う問いに対するシーンでシリアスを締めたんだと納得するしかないですね。


異常現象の発生の目的、そう言った面に触れない作りとならば、やはりその現象を経て登場人物が成長していく過程を楽しむと言うのが本作のセールスポイントであるはず。
描こうとした方向性やテーマ性は理解できたし、そのものは悪くなかったように思えます。
ただ、心情描写不足、不自然なまでの青臭いやり取りを延々と繰り広げ、とてもじゃないが感情移入が出来ないのが致命的でした。
各々のキャラクターをもっと丁寧に掘り下げて、魅力を十分に演出してあげられれば、まだまだ良い話になったように思えます。


と、物語面は散々な酷評になってしまいましたが……
EDの入りや、次回予告の挟み方は次回の内容を気にさせる非常に上手い引きだったと思います。
正直、この上手な引きでダラダラ最後まで視聴した気がします。
TV未放送になる　《ミチランダム》　これもまた次回予告はそそられたんですよね……
まぁ、あれですね。嫌よ嫌よも好きの内って事なんですかね……


自分としては感情移入が困難だった為、この作品を存分には楽しめませんでした。
ですが、感情移入さえ出来れば、物語の解決シーンなどを楽しむ事が出来るかも知れません。
あくまでも、自分が感情移入できなかっただけですので、未視聴の方は一度視聴してみるのも良いかも知れません。