hiroshi5 さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
私は今のあなたに満足していない。
今敏監督の作品。虚構と現実の境を限りなく薄くした内容。本編内で現実と同時進行するドラマ撮影との対比が素晴らしい。
アイドルから女優へ生まれ変わる女性の悲劇と成功を描いているのだが、むしろそれは個々人に対する現実世界の存在とその相違を濃厚に描いているといった方がしっくりくる。
個々人の現実とは、皆が同じような視点で世界を見ているわけではないという意味だ。人間関係、感情、趣味、その他もろもろの全てが一致する人間などいない。各個人がそれぞれ違う価値観を持っていて、違う世界の見方を持っている。
それは、それで常識なのだが、その違う価値観を他者に押し付けるとどうなるのか。上手くいけば「理解」し合える。一方的に「理解」するのかもしれない。または「理解」したつもりになるのかも。だが、本来価値観を押し付けられて自分の価値観を放棄してしまうことは少ない。
しかし、それがこの作品では起こってしまう。他者の価値観を押し付けられて、今の自分を否定されてしまう。でも、他者から観てそれが自分ならば、私はそうあるべきなのかもしれない。その想いを今敏監督は「幻想」と「二重人格」を用いて映像化したのだが、あまりに生生しいため、見ている側は相当の覚悟をした方が良い。
最近、学校のいじめ問題、夫婦内での暴力、離婚、通り魔殺害、自殺などの問題が注目されているが、これらは「パーフェクトブルー」に通ずる点があると思う。相談する相手不足だ。そういう観点で見るとある意味こういった類の事件の加害者は「孤独」という病気の被害者なのかもしれない。
人間の妄想力とは凄まじいものだ。被害妄想は広がれば広がるほど心を侵食して、さらなる孤独へと導くのだろう。残念ながら、私にそういった人に正しいアドバイスをすることは出来ないが、精神科医やカウンセリングにいくことをオススメする。それから、日記や自分の感情を言語化することも良いとされている。
個人的にオススメの解決法は「夏目友人帳」シリーズを見ることだ。
余談だが、今回のアイドルに執着するストーカーを見ていて思った。やはり、時代は初音ミクではないだろうか?w
歳を取らない、死なない、希望道理になる、共感できる人間がいるといった点から判断して、初音ミクこそ次世代を担うアイドルの形だと思う。
ライブでは、人間にはできない動きも可能だし、ワザと人間味を出す事も可能だ。作品内のストーカー的存在が現れても問題は無いだろう。まぁあそこまで逝けば、二次元と三次元の境を自分の世界観の中で取り外しているだろうから、どっちにしても問題は起こるかもしれないが・・・。
何にせよ、素晴らしい作品には違いない。元気が有り余っている時に視聴することをオススメする。