hiroshi5 さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
人類はこれから繁栄します。
まず、最後まで見ること。そして一話から見直す。これがこの作品を理解するもっとも簡単な方法だろう。
結論から判断して、「人類は衰退しました」は意外にも辻褄が合っていて面白い作品だと評価できる。
科学的にどう論理付ける?というのではなく、因果関係を明瞭かつ納得いくものにしてあるか?というのがこのタイプの作品の良し悪しを決める分岐点だ。
そういう意味で「人類は衰退しました」は道理に適った作品だったとも言えなくは無い。
クロノジカルオーダーに並べると
妖精さんの、ひみつのおちゃかい(11,12話)
妖精さんたちの、ちきゅう(10話)
妖精さんたちの、じかんかつようじゅつ(7,8話)
妖精さんたちの、さぶかる(3,4話)
妖精さんの、おさとがえり(5,6話)
妖精さんの、ひみつのこうじょう(1,2話)
妖精さんの、ひょうりゅうせいかつ(9話)
とすることができる。各物語はバラバラでも時系列で並べるとこの作品は驚くほど分かりやすい構成になっている。
断髪、人モニュメント計画、助手さんなどなど本編内に存在する全ての不確定要素が解決する。
しかし、深くこの物語を理解したいのなら原作を読むことを強くオススメする。私自身、原作をまったく読んでいないためアニメだけでは理解しにくい点がチラホラ。人モニュメント計画の実態、妖精さんがどういった生命体なのかはアニメだけでは把握できない。
物語は妖精さんと私を中心としたコミカルな展開となっている。腹黒なキャラが多く、妖精さんの純粋の権化のような生物との対比が非常に面白い。
また、一つ面白いと思ったのが、この作品は万物には意識が存在しているというような設定が存在している。加工チキンないし、機械ないし、髪の毛がそれだ。これは深く考えると非常に面白い物の考え方であり、「こころ」という概念通ずるものがあると思う。興味のある方は鷲田清一「わかりやすいはわかりにくい?」などの哲学の書などを基に吟味するのも良いかもしれない。
少し気になった点がある。
他のレビューでも、本編でも良く見かけたのが「人類は衰退中」だったり「じき、人類はいなくなる」といったフレーズで、主人公の「私」も同じような事を言っていた。
しかし、作品を見る限り、人類が現状況より衰退することはないと感じでしまう。そもそも生命として活動しているのなら自然に繁栄するはずだ。衰退するのはその進歩の過程に立ちふさがる敵や問題があるからだ。
大気汚染・資源の枯渇・凶暴な肉食動物・病気など色々な要因はあるが、それらの問題がこの作品内の人類に立ちはだかっていた感じはなかった。つまり、アニメの現状のまま進むと人間の世の中、または人間と妖精さんとの共存の道を歩む事になるのではないだろうか。
いずれにしても、人間の衰退は既に終了し、これからは文明開花みたいな展開になるのでは・・・・?と思わずにいられない。
今思えば、人類の終わり・世界の終わりなどを描く作品は悲惨な現状を描くことが多い。「学園黙示録」「バイオハザード」「エルゴプラクシー」などはゾンビ化、環境汚染などが原因で人間が衰退することになる。
特にエルゴプラクシーでは太陽光が降り注がなくなり、大気が汚染されてしまったため、人類は地下深くの洞窟に住むようになった。その人類は洞窟内に存在する猛毒ガスに犯されながらも外界に出られない体になってしまい、死を待つだけの、まさに衰退した人類を見せていた。外見は人類の面影は無く、腹がでていて、肌が緑になり、目がギロギロした地底人そのものになっていた。
本来、人類の衰退というのはこういうことを指すのではないだろうか?
「人類は衰退しました」では作品内容をコミカルにしているため、どうしても衰退感が出てこない。つまり、人類は衰退した現状のシリアス感がまったく伝わってこない。
しかし、それが作品の質を落としているという訳ではなく、むしろその矛盾が面白さを引き出している。
緊張の場面に置いても常にマイペースなキャラクターが光っている。その点に、この作品の面白さは凝縮されていると言っても良い。
ただ、これから衰退を続ける可能性は非常に低いことだけを示唆しておこう。