. さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
隠れた名作中の名作。みんなに観て欲しいな・・・。
2002年の深夜枠で放送された作品。なので知らない方も結構いらっしゃるかと思います。ですが、現在でもコアなファン層が存在する程の名作中の名作。
本作品に派手なアクションや演出はありません。また美少女達の萌え要素もありません。その代わり、観る物に暖かみと、ゆっくりと物語を考察する時間を与えてくれます。
古い作品ですが、とんでもないクオリティーで本作は作られています。派手な色調を押さえた暖かみのある作画、本作品の世界観を体現するかの様な透き通り美しい音楽、はっきりと個性を感じ取れるキャラクタ達・・・etc。私は今まで、これ程までに完成された作品は観たことが有りません。
作品の中で泣ける箇所も何度か出てきます。しかしそれは他作品と異なり、作られた泣きの演出ではありません。きっと観ていて、自然と涙が出てくる事と思います。
本作品は未完成です。作品を観て誰もが考えるだろう疑問に対し、回答は最後まで示されません。これは作中、主人公達が物語の結末を考えるシーンに象徴されます。物語は読む側、受け手側の考えで印象が変わってくるからです。
本作は想像を巡らせ、作品中で示されない背景を観る側が作り上げる事を求めています。未完成の物語を自分の考えで完成させる、そういう大人のお伽噺だと私は受け取りました。
~ここから邪推な考察(作品を観る前には読まないで)~
良く指摘される事ですが、確かに世界観は村上春樹さんの作品の影響を強く受けています。しかし決してパクリではありません。同じ素材を使ってはいるかも知れませんが、独自の調理方法で調理された料理の様な物と私は捉えています。
素晴らしい作品に影響され、より素晴らしい作品を作り上げる・・・何も不自然な事じゃないですよね。
作中の主人公であるラッカさん。非常に純粋でひたむきな生き方。揺れ動く心情も大変良く表現されています。しかしながら、何故自分は一人だと思い込んで行くのでしょう。周りの人に支えられ、常に愛情に接している彼女。彼女の心情の変化について、もう少し踏み込んだ描写があれば良かったと感じました。
私の解釈ですが、灰羽達は死者であると考えます。恐らく誰もが寿命では無く、自殺や事故などで亡くなっています。
繭の中の夢はその死因を象徴しています。ラッカの場合、当然落下死。恐らくは自殺と考えます。冒頭彼女を引き上げようとするカラスは友人。ラッカの事を最後まで助けようとします。ですが、繭から目覚めた彼女はその事を忘れています。自分を助けようとしてくれた大切な人を・・・。故に彼女は罪憑き・・・。罪を背負い、羽が黒くなってしまったのだと思います。
灰羽達の住む世界は心の浄化の為の世界。天使とは異なる白くは無い灰色の羽。飛ぶ事も出来ない小さな羽。彼らが未熟で有る事を象徴しているかと思います。
彼らはこの世界で罪を償い(夢を思い出し、罪を認識する)、新たな世界へと巣立っていくのだと思います。
灰羽達が巣立つ時、何処へ行くかですって? 輪廻転生して生まれ変わるのか・・・。それとも神に抱かれて天使になるのか・・・。作中街を取り囲む壁の中で主人公のラッカは巣立ちしたクウの声を聞きますね。彼女の声はとても楽しそうです・・・・・
っと、まぁ邪推な考察はここまでにしましょうか^^
是非、本作品をご覧になって、貴方だけの作品を完成させて下さい。
~どうでもいいおまけ~
作中でラッカがレキに対し、ヒョウコが打ち上げた花火の色、黄色についての意味を聞きます。レキの答えは”わたしは馬鹿です”。でもコレ実は嘘。正しくは”好きです”になります。よってヒョウコがレキに送ったメッセージは”好きです”。レキが巣立ち前にヒョウコに送った鈴の実は白で、”ありがとう、さようなら”になりますが、最後の最後に友達のミドリに託した”レモンのスフレ”。レモンの色は黄色。さりげなくヒョウコに対し、”好きです”と告白しているのですね。なんとも不器用なレキさん・・・。ちなみにいつもヒョウコと一緒にいるミドリさん。ヒョウコから貰った鈴の実の色は白で”ありがとう、さようなら”。色々とお世話を焼いて尽くしたけど、残念ながら気持ちは届きませんでした・・・。こんなところまで細かく描写している本作品!本当に良く出来ているなとつくづく関心しました。