「夏雪ランデブー(TVアニメ動画)」

総合得点
70.2
感想・評価
867
棚に入れた
4001
ランキング
1644
★★★★☆ 3.6 (867)
物語
3.6
作画
3.6
声優
3.7
音楽
3.6
キャラ
3.5

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ネタバレ

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

死者の想いそして死者への想いと向き合って生きていく

壮絶にネタバレしておりますので、見てない人は読まない方が良いです。

花屋でアルバイトをしている「葉月」、店長の「六花」、六花の元旦那で幽霊の「島尾 」
三人(?)の奇妙な三角関係を描いた作品。絶賛するには少々問題アリな作品ではありますが、なかなか個人的には気に入った作品でした。

この作品の面白さは、三人の登場人物の誰に視点を重ねても、各々の物語が存在する点にあるんじゃないかと思います。視聴者それぞれが大きく異なった感想を持ちうる、何回か見たらまた違った見方が出来る丁寧な人物描写、希有な魅力を放つ作品。重くもなりすぎず軽くもなりすぎず見やすい作品でもあったと思います。

・序盤は王道
幽霊の島尾が見えるのは何故か主人公の葉月だけで、六花には見えない。これが作品をとても面白いものにしていました。序盤は幽霊の島尾がユーモアたっぷりで、葉月と六花の恋愛を邪魔するのが楽しかったですねぇ(笑)六花を幸せにしてあげたい葉月、島尾の事が忘れられないのに葉月に惹かれていく六花、葉月と六花の距離が縮まっていく様に嫉妬心を隠せない島尾・・・この段階では王道で普通に面白い。

・中盤からファンタジーに?
おそらくですが、メルヘンチックな中盤から評価が分かれると思います。主人公の葉月は島尾に身体を貸す代償として、島尾が描いた「絵本の世界」に閉じ込まれてしまい、現実では島尾と六花の物語へと徐々にシフトしていきます。主人公が現実から隔絶されてしまった展開が長く感じられ、モノローグや回想を多用する演出もやや単調でちょっとグダついた感はありました。それゆえに序盤は良かったけど、途中から失速したという感想が散見されます。ラストも清々しさがある反面、明快な決着がつかなかったので賛否両論あるんじゃないかと思われる・・・

・絵本の世界/島尾編
やはり葉月の視点だけでこの作品を見てしまうと「イマイチ」になってしまうのです。
島尾の妄執たるや実に生々しいもので、幽霊なのに人間くささが半端ではないんですよねw
「絵本の世界」に葉月を長々と閉じこめて、元嫁とやりたい放題とか何してんねんと。しかもお前なんで成仏してないんだよ、と言いたくなるところですw
しかし、島尾の心情を噛みしめながらみれば、その葛藤がよく描けていて、それが「絵本の世界」にも反映にされていることが分かります。親指姫のコスプレ(笑)をした六花の台詞の節々から、それが感じられ実に面白い。最後には葉月を認め六花の幸せを願った島尾、そして島尾の想いと向き合いながら生きる葉月と六花の決心が絵本を完成に導く。

・絵本の世界/六花編
こっからはかなり妄想気味ですが、前述と矛盾しているようで矛盾してないことを書いてるつもり。
本作はやはり女性向き漫画なので、女性視点の方が自然と言えば自然。
六花は島尾の死を引きづりながらも葉月に惹かれていく。そんな中で島尾の面影を見るわけですが
「絵本の世界」は六花の世界でもあったのではないか?という一つの解釈を思いついた。
非常に面白いと想ったのは、「絵本の世界」に入る前と現実に帰った時とでは葉月には心の変化が見られるんですよね。まぁ単純に考えれば島尾の心情が分かったからだろうとも思われるのですが、そこをもう一歩踏み込んで六花の心が形として見えてきたからではないかと妄想したわけです(笑)

どういう事かというと、島尾の幽霊としての存在は、「六花の想い」によって生まれたのであって、
「絵本の世界」もそれに準ずるものであったのではないか?ということです。島尾の存在も絵本の世界も六花の空想の産物と言ってるわけではなくて・・・彼女の島尾に対する想いがそれらを発現させてしまったという方が伝わりやすいでしょうか。それならば長々と絵本の世界で葉月に一見無為な時間を過ごさせた理由、葉月にしか島尾が見えない理由も説明がつくといえばつく。心奥底で未だ島尾のことを忘れられない六花・・・あの「絵本の世界」が存在した理由もそこにあるように思えましたし、そんな彼女に惹かれていた葉月だからこそ島尾の存在にも気づく事が出来たわけだ、うん(孫にも見えてたじゃないかとかそういうツッコミはこの際無視w)島尾が成仏してなかったのも、葉月と六花が島尾の事を忘れるという選択肢を取らなかったからではないだろうか。

この解釈自体はかなり強引ですが、葉月と六花、特に六花の心がこの物語のラストに大きく影響している事だけは確かで、その点をしっかり見ていけば納得いくラストでありました。葉月は六花の心の奥底にあった島尾への想いを理解し受け容れ、六花は島尾への想いを大事にしながらも前進する美しい物語として幕を閉じた。

・まとめ、らしきもの
おそらく視聴者の大半は島尾夫婦に感情移入しづらい作品ではあったとは思いますが、私はこの二人にはとても説得力を感じました。意識的に視点を変えて視聴してみると印象は大分変わると思います。
あと、変な妄想に取り憑かれてしまったきっかけは、島尾が葉月に憑依するその瞬間、セミロングの六花の姿になっていたからなんですが、あれは単純に親指姫=島尾の伏線っていう方が説得力ありますね(笑)まぁ、半分くらいは当たってるんじゃないでしょうか(笑)いずれにしろ、死者の想いそして死者への想いと向き合って生きていく、清々しく纏めた良作でした。見る前は正直舐めてましたが、予想外に良い作品で驚いてしまい長文になってしまいました。原作も読んでみたいと思わせるアニメでしたです。

追記
まぁ色々レビュー見たけど、ドラマチックな恋愛モノを期待してた人が多かったんでしょうねぇ・・・・wこの作品の本質は恋愛ではないと思います。めぞん一刻だとかゴースト/ニューヨークの幻みたいな極めて王道的なお話のように見えて、実際のところ全然違うわけで、恋愛の決着にカタルシスに覚えるという期待には応えられない作品でしょう。どうこの作品を受け取るかは人それぞれですが、従来の作品に縛られた見方ではなく、この作品の数多くある台詞の一つ一つを流さず見ていって欲しい作品です。

投稿 : 2013/02/07
閲覧 : 289

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