じょー さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
残酷な現実
素晴らしい作品で、見る価値は高いと思います。私がこの作品から受けたメッセージは時間が如何に残酷で、人と人とのつながりは如何にはかないかという事でした。このメッセージに対して、1話、2話では出演者の心情が、非常に丁寧に書かれていました。これが3話では、山崎さんの歌に任せてしまった事に不満が残りました。大好きな歌なのですが、ここまでの2話であれほど丁寧に絵で描いてきたのに、現実として一番つらい、届かない手紙、心が離れていく課程、そしてその残酷な結果を、歌に乗せたスナップショットでごまかされた様な気がしました。この切なさこそがメッセージの全てであり、向かいのホームで誰かを探す心情を歌ではなく、アニメで、そして一番丁寧に、描いて欲しかったです。
作画はとてつもないレベルです。桜花抄では、乗り換えの駅での一枚の絵だけで、その寒さや心細さが伝わりました。コスモナウトの木の陰でたたずむ一枚の絵と、蝉の声だけで、むせるような南国の夏と切ない思いが伝わってきました。さすがにこれは、素晴らしいとしか言いようがありませんでした。ラストの無人の踏切の絵も切なさがうまく表現されていました。
批判しましたが、一度でも心が通じ合った大切な人を失った経験がある人であれば、このアニメとあの歌の歌詞は心に楔を打つと思います。ここで描かれている切なさこそが、うまくいかない事がほとんどである恋愛の真実と思います。そしてほとんどの幸せは、こういった切ない思いに上書きされていて、たとえ一番心に残る人と結ばれることはなくとも、人生は割と幸せに続いて行くんだよなー、なんてことを恋人の腕をとる明里のスナップショットを見ながら考えさせられてしまいました。
短い映画ですので、是非ご覧ください。