おいす さんの感想・評価
4.9
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
アニメ史に残る傑作
ライトノベル「とらドラ!」全10巻が原作のラブコメ作品。
しばしば"昼ドラのような"と評される、
後半一気に展開する5人のドロドロとした恋愛模様が見所だが、
主人公・竜児とヒロイン・大河の複雑な家庭事情を通じた
人間としての成長や葛藤も同時に描かれており、
「大人」がひとつのキーワードにもなっている。
繊細でリアルな心理描写がとりわけ評価されている
竹宮ゆゆこ氏(over三十路)の原作を、
作画・演出・声優と軒並み高いクオリティで
見事にアニメーションとして美しく丁寧にまとめ上げた傑作である。
表情豊かに描かれている本作の登場人物だが、
キャラクターの個性や性格が
美少女アニメによくある単なる記号的な属性としては表現されていない。
優しさゆえに相手を傷つけてしまうといったジレンマを抱えながらも
本音を曝け出すことで互いに成長していく姿が、
会話や伏線を積み上げていくことで繊細に描かれている。
多くの人がこの作品のキャラクターに
親近感やリアリティを覚える理由はそこにあるのだと思われ、
他のラブコメアニメとは一線を画している。
惜しむらくは、
第3,4話のアニメオリジナルエピソードを含めた
序盤の展開がややもたついたため、
そのしわ寄せとして後半の展開において、
原作に比べると消化不良かつ描写不足な部分が
生まれてしまった点であろうか。
キャッチーな音楽とBGMも魅力の一つである本作だが、
最終話、後期ED「オレンジ」が流れてから数分間の展開が特に美しく、
視聴後に心地良い余韻に浸ることができたのが極めて印象的である。
また、本作をアニメで知った方には
原作を読んでみることを是非おすすめしたい。
ライトノベルを普段読まない方でも非常にとっつきやすい文体であり、
スピンオフ全3巻と、アニメでは省かれてしまった原作エピソードを含め、
本作の魅力を改めてじっくり味わえることうけあいである。