STONE さんの感想・評価
4.4
物語 : 3.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 3.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
本物になろうとする偽物
原作は未読。
基本的な印象は「化物語」と同じような感じだったが、より会話主体になった感じ。この
会話が独特の言葉選びもあって、相変わらず面白い。
加えて会話内容が「化物語」以上に雑談的な無駄なもので、ストーリー展開に関係ある部分
だけの描写なら、半分の話数でも充分じゃないかと思われるぐらい。
ただ、この作品の真骨頂はむしろこの無駄な部分にあるように思える。そういう意味では
「化物語」以上にストーリーより、個性的な会話や映像を楽しむ作品という印象。
第8話の歯磨きプレイなどは一話丸々本筋とは関係のない内容だが、結果としてかなり印象
深い回になっていた。
「化物語」で、キャラ同士のやり取りに魅了された人は「本作も楽しめたのでは?」と思う
反面、「化物語」ではそれなりに見られた怪異とのバトル展開を期待した人は相当肩すかしを
食らったのではないかなという感じがする。
あと「化物語」が未視聴の人ははっきり言って、「よく判らない」で終わりそうな作品で、
「化物語」視聴が前提となる作品という感じ。
背景画に関して、「化物語」でもあえて写実的な描写ではなく、一種のデザイン画のような
描写だったのが非常に印象的だったが、本作においてはそれが更に強まった感じで、描写では
なく造形そのものが現実にはないようなものが多かった気がする。例えば阿良々木 暦と
八九寺 真宵が歩きながら会話するシーンの背景などは南ヨーロッパのバカンス地のような
感じで、とても日本とは思えない感じ。
これは個人的洞察だが、設定上の舞台から背景を考えているのではなく、描かれている
キャラの状況、行動、心情を優先させて、その雰囲気に合った背景を出しているのでは
ないかと。
先の例だと、舞台設定から考えると非現実的な背景ではあるが、夏の日ののんびりとした
感じが背景画によって、より感じられることができた。
阿良々木家の家の描写もそんな印象。
本作は火憐と月火の暦の二人の妹を中心としたストーリーだったため、家の中の描写が
非常に多かったが、とにかく生活感のないインテリアなどが印象的。ただ、これもその場の
雰囲気にはそれぞれ合っていたように思える。
あと映像に関してエロティックな描写が増していた印象。
このエロティックという部分に関しては、単におっぱいや下着などのファンサービス的な
ものをいっぱい出すというわけではなく、ありきたりなものでもシチュエーションや演出で
エロティックに感じさせるというもので、見せ方が上手いなと思った。前述の歯磨きプレイ
なんぞはその最たるもの。
全体的には足の描写が印象的で、スタッフに足フェチでもいたのかと思ってしまった。
前述のように会話や映像の印象が強く、無駄なシーンが多い作品だが、根底にあるテーマが
しっかりしており、その辺が表面上だけの面白さを狙った作品ではないなという印象。
タイトルが「偽物語」というだけあって、色々な部分で偽物という観念が登場してくるが、
最後に出てくる「「偽物は本物になろうとする意志があるから偽物に価値がある」という
考え方はなかなか興味深かった。
キャラに関しては中心として描かれた火憐と月火の姉妹がやはり印象的。
あと「化物語」では沈黙を貫き通した忍野 忍がここまで饒舌になるとは思わなかった。
「化物語」での主要キャラの5人の少女達もちゃんと登場するが、「化物語」での一件が
自身に影響を与えたのか、それぞれ心情や阿良々木 暦との距離感が変わっている。
加えて5人とも髪型が変わっており、この容姿の変化が彼女達の内面変化をより効果的に
見せているみたい。