たんたんたぬき さんの感想・評価

4.1
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態：観終わった

映画としての良さ

ファーストガンダムの次にこのガンダムが好きです。やっぱりシャアとアムロは戦うべきです。新訳Ｚは見てないのですけど、新訳が正史ならこの作品は無いそうです。確かにこの内容は過激です。シャアと言えばそれまでの悪役と違って親を殺された復讐とかニュータイプの世作りとかで敵ではあるが悪とは言えない面を見せ、Ｚではカミーユを導く先輩として人間味のある面も見せていました。しかし、そのシャアがどうした？ぐらい過激な思想を展開します。

でも何故なのか、こっちのシャアの方が本当のシャアだという気持ちがあります。Ｚで悩み迷うシャアは私はファーストでは知りませんでした。いつも自信に満ち溢れ信念を持って行動するそういったアグレッシブなシャアこそが私の中のシャア像でした。思想の中身を聞くと確かに抵抗があります。これは悪だと言えるものがあります。しかし善悪の前にシャアは行動派でなければならないと私は感じていました。そのシャアが久しぶりに帰ってきました。かっこ悪いところも見せますが、前半のシャアはファーストで最初に見たカッコ良いシャアが戻ってきたようでした。

迎え撃つアムロがまた良い。いつもグダグダしてしまうあのアムロがブライトにタメ口で実に堂々とした態度です。思想の方は先送りと曖昧な話ですが、シャアの絶望と違い、小さくても希望をと語るアムロにはこれが主役だと言う輝きがあります。ラストに向かっていくと、この二人初登場と立場が全く逆転してしまいます。情けない弱いアムロが、シャアをそうやって見下げます。この二人の立場の逆転が最初から見ていた私にとっては感慨深いものがあります。

今でこそ色褪せていますが、当時としてはすごく絵が良かったですね。それにＴＶ版と大きく違うのは良く動くガンダム。これはＴＶ版ガンダムへの皮肉っぽい意味もあります。この作品かなりの長い時間二人のバトルで締めています。二人のやり取りも良いし、バトルの演出もすごく楽しませてくれる。富野ガンダム芸を見せ付けてくれます。

この作品私は実写監督にずっとなりたかった富野監督の映画への拘りが特に好きです。ストーリーの組み方が素晴らしい。富野監督ははっきり言って映画の方がＴＶアニメより向いていると思います。そもそもストーリーテイラーとしては微妙に甘いと感じる部分も初期にはあります。ただ映画だとそれが切れ味抜群になります。富野監督の本質は漫画家じゃなくて、映画監督だと思います。全く退屈さを感じなくて、導入で引き込まれて、盛り上がってすぱっと閉まって終わります。部分部分を見るとＴＶガンダムでの面白さが流用されています。ただ軸となるストーリーが映画を作るならこうだみたいなお手本の様な上手さです。物語が上手いとかそうじゃないのです。観客の感情を２時間近くでどう動かすか？ってのが上手くて心地良い。