しゅりー さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
2012年夏の話題を掻っ攫った劇場用アニメ
日本テレビ系列で異常なほど宣伝していた2012年夏の劇場用アニメ。スタジオ地図制作。
細田守監督の過去作と同様貞本義行さんのキャラデザで描かれる人間の母「花」と
狼男の父の間に生まれたおおかみこども、少女「雪」と少年「雨」の親子の物語。
公開前の時点で個人的な本作最大の見所は高木正勝さんの音楽でした。
以前たまたま「Air's Note」というCDが手に入り、収録曲の持つ独特な世界観に
驚かされた経験があったため、劇中音楽への期待は非常に高かったです。
実際に視聴してみても冒頭シーンから自然に耳に馴染む優しい音楽であり、
劇中シーンに違和感を感じさせないBGM揃いでこの点は大満足です。
また、昼間の街中の騒音や深夜の静けさ、雨や風の音、木々や雪の立てる音など
様々な環境音が劇中で持たされた存在感が通常のアニメよりも大きく感じました。
声の部分では宮﨑あおいさん演じる花の台詞一つ一つに花の強い想いを感じました。
雪と雨の前半と後半のどちらの役者さんも、それぞれのキャラクターの内面を
引き出していたと思いますし、他のキャラクターについてもハッとする瞬間ありです。
特に雨役の方は雨の切実な想いを良く汲み取っていたのではと思います。
ここまで書いてきた通り耳で感じる部分での感動は凄まじい物があるアニメでした。
さらに映像面も特報や予告を見ていただければわかるとおり、キャラクターの
活き活きとした動作と場面ごとに印象的に描かれた風景が素晴らしいです。
特に風景描写については作中で流れる10年以上の時間経過をなるべく不自然に
見せないように活かされているような場面が多く、興味深い映像でした。
不満だったのは所々風景に対してキャラクターの配色、陰影が
浮いてしまっているように感じる部分があったところくらいでしょうか。
物語についてはあまり多くは語るべきではないでしょうが、
「この夏、日本中を笑顔にします」というキャッチコピーには
ちょっと疑問を持ってしまうような内容だと思えました。
どちらかというと家族の生きてきた時間と結末に涙してしまうかと。
何で日本の狼物アニメはこんなに儚いのか…決して狼は悪者ばかりではないですよ。
本作を家族で観るとして、親は良いですが子供の感覚でどう見るのか不思議です。
たぶん子供の頃の私だったら理解出来ずにポカンと眺めている
だろうなと思いながら観ていました。
視聴を終えてみて、細かいところでフォローが必要と思う部分はありましたが、大筋は楽しめました。
最近視聴した「虹色ほたる」が子の立場から親に通ずる体験を経て自立していく物語
であるなら、本作は子を精一杯愛し、成長を見守る母親の立場からの真心の物語
なのではないかと勝手に思ってみました。
一人の人間が親になっていくこと。それを意識する機会が多いような方にこそ
オススメできるアニメなのではないかと思います。