hiroshi5 さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
日常を悲壮と共に描く愛楽的作品
この作品を見るに当たって、是非「遠い世界」を見てもらいたい。
「遠い世界」
http://www.youtube.com/watch?v=c_To80_L39U
これは本当に個人的推測でしかないのだが、この「彼女と彼女の猫」という作品は「遠い世界」と深く関連しているように思える。
新海誠の作品はどれを取っても素晴らしいが私はこの作品が非常の気に入っている。
悲壮感を漂わせながらも世界の美しさを描く新海誠の芸術は賞賛に値する。
彼の細かくて繊細な描写はこの作品でも表現されていて感動するばかりだ。
ポイント①
猫が拾われてから太陽の光が差し込む
ポイント②
猫の幸せな日常を描いた後にすぐ女性の失恋を投入する(「ほんとにきてね」のセリフが対比として女性の失恋をより一層深刻なものにする)
ポイント③
彼女が失恋した後には髪が切られている
ポイント④
女性が電車に乗り、窓に手をあてるシーン
ポイント⑤
「この世界のことを好きなんだと思う」
ポイント①~③までは作品の繊細さをよく表している。他にも重厚な鉄のドアの音やセミの鳴き声などにも耳を傾けることで、この作品のテーマ(↓)である「生活」をリアルに体感することができる。
新海誠監督の言葉「生活していくことの漠然とした寂しさ、微かな痛み、ささやかな温もりなど、言葉では伝えにくい感情を映像と音に託しました。」
さらに、ポイント④と⑤は「遠い世界」に通ずるものがあると思う。
窓に手をあてるシーン。これはどちらの作品でもほぼ同じように使われている。違いはその手の上にもう一つの手を乗せてくれる相手がいるかどうか。
彼氏を失った彼女が孤独である「孤独感」と「悲壮感」を「遠い世界」という作品と対比することで表現したのではないだろうか。
「世界」という単語はどちらでも使われているのだが、「遠い世界」では以下のようなセリフが使われている。
「この世界はきれいね。でも受け入れることはできない。あなたが、いつか、ほんとうの半分を見つけるまで」
このセリフは何度も考えたが結局満足いく解答を見出せなかった。しかし、決定的に両作品の違う点は
今作品:相手がいなくとも、寂しくともこの世界が好き
遠い世界:世界は好きだけど、相手がいないと受け入れられない
という点だ。
どうして同じ監督からこのような両極端な姿勢を持つ作品が生まれるのか。そのことを私は新海誠さんに聞いて見たい。