「地獄少女(TVアニメ動画)」

総合得点
71.2
感想・評価
814
棚に入れた
5090
ランキング
1402
★★★★☆ 3.7 (814)
物語
3.7
作画
3.6
声優
3.7
音楽
3.6
キャラ
3.7

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ネタバレ

STONE さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6
物語 : 4.0 作画 : 3.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

あとはあなた次第

 原作は未読。
 絵のタッチが70年代の少女漫画を思わせるものがあるが、今となっては逆にこれが
新鮮。
 70年代はこの手のタッチのホラー漫画が結構あったが、そういった意味でもこの作品の
空気感によく合っている。
 おまけに白いフィルターを掛けたようなぼやけた色使いがより雰囲気を盛り上げて
くれる。

 ホラーうんぬんと書いてしまったが、ストーリー自体はホラーではなく、地獄少女が
怨みを持つ人に代わって、相手を地獄に送るという復讐もの。
 法で裁けぬ者を・・・、という基本設定は時代劇「必殺シリーズ」を思わせるもので、
特に主題歌前のOPの前口上の映像なんかは必殺シリーズを、それもライトになった「必殺
仕事人」以前のハードだった時期のものを意識したような作り。
 ただ「必殺シリーズ」の場合、裏稼業の闇を感じさせる前口上映像に較べて、裏稼業の
面々の表の顔は明るく陽気なもので、そのギャップ感を感じさせる効果があったが、
こちらは閻魔あいを始め、はなから胡散臭い面々のため、その効果はあまり感じられ
なかった。

 「必殺シリーズ」が対価として金を得るのに対して、こちらの対価は「依頼する側も
死後は地獄に送られる」というもの。
 長いスパンで見ると、依頼者も相手も結局は同じ境遇になってしまうわけで、これは
相打ちを提供しているようなもの。
 これはなかなかリスクの高い復讐である。それだけに依頼者も相当復讐心が強いの
だろうが、回によっては勢いで頼んでしまった人もおり、こういう人は後々後悔しながら
過ごすんだろうなと思ってしまった。
 このリスクのある設定のため、恨みを晴らしても鬱な感じが残る作品で、この後味の
悪さが、「視聴者にも復讐というものの重みを感じさせるのではないかな?」と思った。

 中盤より登場する柴田親子により、「地獄送り」というシステム?に対する肯否が
描かれるようになる。
 いかなる理由でも人を地獄に送るような復讐を否定する父の一に対して、相手が悪人で
法で裁けないような相手に対して、復讐の機会を与えてくるものとして肯定する娘の
つぐみ。
 理性では一の意見に頷きながらも、この作品で描かれる怨みの相手はいかにも悪人と
いった感じの者ばかりのため、おそらく大半の視聴者はつぐみの意見に感情移入して
いたのではないかと思う。まあ、自分もそうでした。

 しかし、23話において、つぐみの心を大きく揺れる。なんの落ち度のない看護婦が
見ず知らずの人間に地獄に送られてしまう。
 これまで一種の天罰のように描かれていた「地獄送り」だが、実は考慮されるのは依頼
する側の怨みの重さのみで、送られる側がそれに値するか否かはまったく考慮されていない
ことが判明する。
 作品の基本コンセプトを「人智を越えた存在が悪人を成敗する」として捉えていると、
それを根底からひっくり返されるわけで、これが結構ヘビー。

 ここから最終話に掛けて、閻魔あいの過去、柴田親子の過去、そして、閻魔あいと柴田
親子の因縁が描かれる。
 これまで良識ある大人の意見として、「地獄送り」を否定していたのかと思われた
柴田 一だが、その理由が過去に起因していることが判明する。
 そして、閻魔あいもまた怨みを持つ側の人間であったことが判明。
 結局、怨みを晴らしても、その人の心に平安は訪れないということなのか。
 依頼する側も地獄に送られるという対価は、復讐を遂げた者のその後の心の重さを象徴
するものなのかもしれない。

 作品内では結局のところ、「地獄送り」というものの肯否は描かれないまま終わるが、
これは閻魔あいが言うように「あなた次第」というところなのかな。

投稿 : 2012/08/29
閲覧 : 281
サンキュー:

3

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