九条 さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
被害者になりたい願望。
日常生活を営む上で、誰もが経験する精神的肉体的ストレスや閉塞感から齎される逃避からの脱却を
今敏監督が皮肉やユーモアを織り交ぜつつ描くサイコサスペンスであり、多種多様な妄想が蠢く作品。
刮眼するべき点は、難境から現実逃避せざるを得ない原因を自己ではなく、他者に転嫁することにより
ミュンヒハウゼン症候群が如き同情を誘う救済的装置として、矛先を転じさせる人間の脆弱性であろう。
取り分け、少年バットという都市伝説的な通り魔を具現化することにより、共有幻想を大衆に促しており
少年バットに襲われることが唯一の救いであるかの如き神格化し、被害者になりたい願望が蠕動する。
つまり、自力救済するのではなく被害者になることを選択し、現実逃避しようと目論む滑稽味が溢れる。
しかしながら人間の潜在的な「自己防衛」を完全なまでに否定し、その挙句に少年バットを撃破しており
短絡的かつ一方的とも取れる理想論で幕を閉じる終局については聊か御座なりであり、理解に苦しむ。