にゃっき♪ さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
Lost in the Lost World
文庫は12巻+プログレッシブ、web版はAlicizationの完結まで既読。
原作はアニメの前半部分が1巻で終わってしまい、後からエピソードが何冊も追加されるというスタイルで出来ています。登場人物の心情面を補強してくれるエピソードも多いですが、内容的に多くの矛盾があり、まとまった作品と言えるような代物ではありませんので、アニメがどのように再構成されるのか、大きな期待を持って視聴に臨みました。
私はこの作品は日々繰り返される刹那的な状況のなかで、そんな状況であるからこそ出会うことがが出来た、キリトとアスナの純愛物語だと思っています。
だからまずゲーム内に閉じこめられた人たちの、醒めない悪夢のなかでの葛藤をしっかりと描いて欲しかったです。現実世界で眠り姫になった家族を心配して悲しんでいる人たちの状況描写がまったくないのもどうかしています。いつクリアされるかわからないばかりか、たとえ現実に戻れたところで、何年も時間を凍結された自分の居場所が残っているのかすらわからない絶望感が伝わってこなかったのが物足りなく感じました。
最前線で戦うプレイヤーたちのレベルアップに明け暮れる日常も綿密に描いて欲しかったです。主人公がどんなに苦労して強くなったのかを視聴者に伝えなければ、レベルの差を見せつけるようなエピソードを見せられても説得力の欠片も感じられません。ギリギリの緊張感の続く状況のなかでの辛い戦闘の日々の描写なしには、とても納得できるものではないと思います。
攻略組には参加できないプレイヤーがサポートに徹するスキルを選択する過程もわずかでもいいから描いて欲しかったです。彼らは自らが出来ること、自分の役目を理解している人たちで、彼らの存在なしに攻略は不可能です。支えあい、協力しあい、信頼感で結ばれた仲間との絆を描かれなければ、強くて女性にもてる主人公が勝手に大活躍するだけの作品にしか見えません。
そして何よりもキリトとアスナの心情の変化を丁寧に描いて欲しかったです。ゲーム内に閉じこめられ当初は泣き明かす毎日を過ごしたアスナが、無為な毎日に決別し攻略の鬼と化すまでの過程。安眠できない毎日を過ごしていた彼女のなかでキリトの存在がどのように変わっていったのか。唐突にラブラブモードに突入するのでは視聴者を置き去りにしてるとしか思えません。
描き足りない駆け足の展開にも関わらず、女性プレイヤーと絡む追加エピソードだけはきちんと拾って時系列に構成したのはどうなのでしょう。切りたくないエピソードである事は理解していますが、まるでただのハーレムアニメのように誤解されるのはあまりに悲し過ぎます。後半のフェアリィダンス編はテンポの悪さは改善されましたが、内容的にはチートなキリトがアスナを救うために走り回るだけですので、キャラへの思い入れがなければ視聴を続けるのが辛いレベルではないかと思います。動いているキャラが見られただけで満足すべきかもしれませんが、前半をもっと尺をとり丁寧につくってもらえなかった事が残念でなりません。