入杵(イリキ) さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
化物語を見ていないと楽しめないかも。
本作は視聴前に化物語を視聴することを強くお薦めしたい。
化物語では次回予告と阿良々木君を朝起こすことぐらいで
しか登場しなかった阿良々木君の二人の妹、
可憐と月火に関する物語である。
偽物たちは、本物でないからこそ本物以上に魅力があると言える。
彼女達は栂の木二中のファイヤーシスターズと
呼ばれていて、正義の味方"ごっこ"をしている。
火憐「ごっこじゃないよ、お兄ちゃん」
月火「正義の味方じゃなくて正義そのものだよ、お兄ちゃん」
と言う二人の台詞がとても印象的だった。
本作は西尾維新の偽物語 上下巻を原作に
かれんビー 7話
つきひフェニックス 4話
の計11話で構成されている。
化物語に引き続き独特の言い回しや描写が秀逸で、
観ていて飽きない、数度の視聴に堪える作品である。
ビジュアル面に関しても申し分のない出来映えだ。
本編に関しては、
「かれんビー」あらすじ・感想
{netabare} 阿良々木暦は恋人の戦場ヶ原ひたぎによって学習塾跡に監禁された。
千石撫子を苦しめていたおまじないを意図的に流行らせている人間がいる。
黒い喪服のようなスーツに身を包んだ男、その名は貝木泥舟。私の好きなキャラである。
かつて、ひたぎを騙した詐欺師の一人である。
ファイヤーシスターズはこの男を懲らしめる為に
居場所を突き止めるが、返り討ちにあってしまう。
阿良々木君は妹を助ける為、ケ原さんと共に
貝木の元へ向かう。
歯磨きシーンは大変面白かった。
阿良々木君と火憐の戦闘シーンが
原作の雰囲気と大分違い大袈裟だった。
{/netabare}
「つきひフェニックス」あらすじ・感想
{netabare} 夏休みの外出中、暦は影縫余弦と斧乃木余接と名乗る不思議な二人組と出会う。
再会した貝木によると、
彼女らは「不死身の怪異」を専門とするゴーストバスターだと言う。
吸血鬼である忍野忍とその眷属だった自分が目的だと考える暦だったが、彼女らの真の目的は意外な人物だった。
彼女たちの目的、矛先が自分の小さいほうの妹である
阿良々木月火であることを知った暦。余弦の手によって
時鳥の怪異に憑かれているという月火の正体を目の当たりにする。
しかし、暦は不死身で偽物な彼女を自分の妹として、
家族としてこれからも変わらず受け入れることを決意する。
そして、最終決着をつけるため、忍と共に影縫と余接の待つ塾の廃墟へと向かうのだった。
火憐が阿良々木君を肩車しているシーンはシュールだった。
忍が話すようになってまた会話が面白くなった。
しかし、尺が短くてもの足りなさが否めない。
{/netabare}
戦場ヶ原などのメインキャラが比較的多く出ている所為か、
話数が、
かれんビー:つきひフェニックス=7:4
になっているのが残念極まりない。
かれんビーの1話での八九寺との絡みにかなり時間を、
裂いたが、それはそれで面白かったが、
その所為で、つきひフェニックスが
尻切れトンボになってしまった感が否めない。
どう考えても6:5
出来れば5:6位の比が欲しかった。
この作品は絶対に原作を読むことを薦める。
この作品は原作で補完してこそ真の評価が出来ると思う。
また本作に象徴されているもの「本物」と「偽物」について
{netabare}
阿良々木火憐と阿良々木月火は自称正義の味方「ファイヤーシスターズ」である。彼女達は彼女達の経験を元に「正義」を形成し、自分達の基準で定めた「悪」を断罪する為に日夜活動する。
貝木泥舟は自身の人間味を完全に嘘と韜晦により隠し、「俺は金の為なら死ねる」と平気で言ってのける守銭奴的詐欺師である。彼が詐欺を働くのは人を貶めたいとかそう言う気持ちは無く、完全な金儲けの手段として行っている。彼の「正義」は金儲けである。ここで法律上の話をすればファイシャーシスターズが善、貝木が悪となる。しかし個人間では其々が正義を貫き、善悪つげがたい状態である。貝木のした事も「地獄少女」と同様に「おまじない」を売っただけであり、最終的に消費者の選択に委ねられている。
影縫余弦と斧乃木余接は「不死鳥の怪異」を退治するゴーストハンターで彼女は人間社会で人間を欺きながら行き続ける「不死鳥=阿良々木月火」を始末すべく、彼女の正義に従い行動する。
阿良々木暦は自らの妹を守る為、忍野忍と共に影縫余弦と戦い、彼の「正義」を貫く。
この場合「善悪」の判断に躊躇することだろう。「かれんビー」の時のような完全な悪が存在しない為だ。怪異を退治することも正義、妹を守ることも正義だからだ。
国家間の戦争も「正義」と「正義」の戦いである。完全な侵略行為(悪)で戦争をする国は殆ど無く、自らの正義に従って戦争をするのである。時には敗戦国を断罪し、自らの思想を押し付ける行為も厭わない(東京裁判が良い例)。
本作のテーマ「偽物」はその「正義」に関してに他ならない。阿良々木暦が「化物語」で貫いた正義、これは偽善ではないのか。
また阿良々木君は皆に感謝される一方(惚れられている節もあり)、事件では全くと言っていいほど役に立っていない。
ここで阿良々木君が出した答えが「偽善」も「正義」ということである。「偽善」は「偽物」であるけど「本物」以上に価値がある。カントで言えばきちんと「定言命法」になっているのである。
「つきひフェニックス」で月火が「偽物」であること分かっても、月火は月火である。その事実に偽りは無い。
この「本物」と「偽物」、「正義」に関する「善悪」が本作のテーマである。
{/netabare}
また化物語に引き続きDVDに副音声の
オーディオコメンテータリーが収録されており、
第一巻には裏音声も収録。
1枚で三度美味しい構成になっている。
化物語での副音声よりもクオリティが高く、
是非、視聴して頂きたい。
私は1日掛けて副音声を聴いた(笑)