タマランチ会長 さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
誰もが持っている「青春のノスタルジー」
間抜けな宇宙人が事故で地球に墜落し、現地の地球人と恋に落ちたが、なんだかんだあって二人は引き裂かれるってだけの話。ストーリーはデタラメです。でも、その周りを彩る登場人物の恋愛模様は本当に美しい。
筆頭は何と言っても谷川疳菜さんだというのは異論はないでしょう。彼女は主人公に好意を寄せていながら、宇宙人の先輩にとられちゃいます。嫉妬したり、焦ったり、本音をぶつけたり。そして最終的には実に爽やかに自分の気持ちに整理をつけます。それら一つ一つの彼女の表情こそがまさに「青春の美しさ」そのものだと感じます。そして、その他先輩や主人公などもまた、戸惑ったりうろたえたり、本当に良い表情をところどころで披露してくれました。
そして彼らの平凡で美しすぎる青春は、これまで撮影されたフィルムからレモン先輩の手で編集されていました。そこに映し出されていたものは、これまでの名場面集とか、ストーリー展開上外せない山場だとか、そういうものではなく、彼らが何気なく日常の中で見せたなんでもない一瞬の表情でしかないのです。でもその表情は、はにかみだとか、テレだとか、この年代の少年少女ならだれでも見せる本当に美しく輝いているものでした。こんな素敵なシーンはこれまで観たことありません。それを観ながら疳菜ちゃんは涙を流していました。私も泣きました。
レモン先輩の編集したフィルムをみんなで観るシーン。
「あの夏」のウィキの記述は以下のようになっています。
>年長の視聴者へ向けた“ノスタルジック”とともに、恋愛を描くうえでは高校生が一番適していると黒田は考え、メインキャラクターは高校生となっている
まさに私はスタッフの思うつぼです。「青春のノスタルジー」。見事はまりました。こういうのを見せられると、ストーリーとかどうでもいいと思ってしまいます。こんな出鱈目なストーリーの中で見せる美しい表情こそすばらしいのだと思います。つまりはスタッフが「何を描くか」こそが大事なんだということです。(ついでですが、「グラスリップ」もこの手の作品だと思います。)
黒田さんと羽音さんのコンビで作った「お願いティーチャー」を、長井龍雪氏ががっつり演出したのでしょう。「おねティ」も当時の水準としてはある程度人気作だったみたいですけど、「あの夏」はもう別格によくなっていると確信しています。
そして今現在、(16/10/31)、これまで観たアニメの中でおそらく一番好きな作品です。
(以下、以前の評価)
おねがいティーチャーの焼き直しです。
でも、おねがいティーチャーよりも演出が冴え、ずっと面白い作品に仕上がっています。
主人公とヒロイン以外は、脇役全員片思いの連鎖ですが、回を追うごとにそれぞれのキャラクターがそれぞれに自分と向き合い、正直な気持ちを告白していきます。最後は主人公とヒロインのために全員が力を合わせ奮闘することになります。
この展開は「あの花」も同じです。しかし、キャラクターの告白はまさに教会で神父に罪を告白するようなカタルシスがあり、その後の彼らの迷いのない一途な行動は、実にさわやかです。それに加え、登場人物の表情やカット割り、音楽などの演出が絶妙で、本当に感動的な画面が出来上がっています。私は、この長井龍雪監督は、宮崎駿の後に続くことのできる人材ではないかと期待しています。
11、12話のドタバタアクションも、賛否はわかれるでしょうが、「魔女の宅急便」のラストのイベント的なものととらえ積極的に評価すべきでしょう。
個人的な感想としては、カンナ(青)萌えです。
最終話の、みんなでフィルムを観て思い出に浸る場面なんか、とても感傷的で思わずもらい泣きしてしまいました。この最終話は秀逸です。「あの花」も好きですが、どちらかといえば自分はこちらの作品をより高く評価しています。