STONE さんの感想・評価

3.9
物語 : 4.0 作画 : 3.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態：観終わった

真実追究の肯否

　原作は未読。坂口安吾自体は、他作品はそこそこ既読ですが。
　明治を舞台にした原作を近未来に置き換えたらしく、どこまで原作に忠実なのかは
判らないが、本作を見ている分にはあまり無理を感じない出来。
　いつの時代でも人のやることはそう変わらないということなのかな。

　序盤は無難な印象のミステリーものという印象だったが、回を追うごとに事件自体が魅力
的になってきた。
　各事件の背後には戦後の国家を中心とした陰謀があり、それが語られることにより、話が
深く、更に作品自体の軸ができた感じ。

　通常のミステリーと異なるのは、因果や別天王といった人ではないものや、人工知性の
風守のような存在が登場すること。
　ミステリーにこの手の人智を越えるようなものを出す場合、一歩間違えるとストーリーが
ムチャクチャになってしまう危険性があったりするのだが、この作品においてはうまいこと
処理されている印象。
　当初、因果の「相手に1問だけ質問に答えさせる」能力の存在を知った時、「簡単に
犯人を見つけられるじゃないか」と思ったりもしたのだが、質問内容は事件の本質に
まつわるモノが多く、犯人特定などはあくまで結城 新十郎の推理によるものが多い。
　まあ、因果にしてみれば御魂を食べるための質問であるわけだから、相手の本質に関わる
内容である必要があり、犯人が誰か？ということ自体はおそらく因果にとってはどうでも
いいことなのではないかな？。

　多くの事件は海勝 麟六の推理が間違っており、結城 新十郎の推理が真相を暴くといった
形を取っている。
　結城 新十郎の場合、因果に御魂を与えるためにも、真実を追究する必要があるのだが、
見ていると因果とは関係なく本質的に真実を追究したい要求に駆られているように
見受けられる。
　推理合戦という観点では海勝 麟六が遅れを取っていることになるのだが、
「事件解決」の解決という部分に着目すると、必ずしも真実を明らかにすることが一番いい
解決になるとは限らず、むしろ海勝 麟六の推理した結果の方が全体をうまく収めるような
形になっている。まあ、悪い言い方だと、いかにも大人らしい隠蔽ではあるのだが。
　結城 新十郎の方が一歩先を行っているように見えて、その実、常に海勝 麟六の手の
ひらで踊らされているような感じになっているのが面白い。

　作品中では結城 新十郎の過去や、因果や別天王の詳細は判らないまま。これは劇場版の
方を見なさいということみたい。こういうやり方自体は個人的にはあまり好きではないの
ですが。

　主役の結城新十郎役は俳優の勝地涼さん。
　同じ演技でもテレビや映画などの顔出しの演技と、アフレコの演技は違うものみたいで、
結構違和感を感じることが多いのだが、勝地涼さんに関しては違和感を感じることが
なかった。
　まあアニメのアフレコは初めてではないし、テレビ、映画オンリーではなく舞台をやって
いる俳優さんはアフレコをうまくこなせる人が多い感じがする。

　海勝 梨江や佐々 風守などのヒロインはなかなか可愛らしく、やり方によっては更に
それを感じさせることができたような気がするが、いわゆる「萌え」を押し出すような
作品ではないから、これぐらいでいいのかな。