ワタ さんの感想・評価
4.3
物語 : 5.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
「俺の拳が!俺の上腕二等筋が!俺の魂が怒り狂ってる!」(長文です)
※ネタバレフラッグ立ててますが、作品の重大なネタバレを含みますので、未見の方は注意。
サンライズ制作によるオリジナルアニメ。ジャンルは学園+SF+ロボ。2クール全26話。
「現実と信じていた場所が、実は虚構の世界であった」という設定は、そう珍しいものではないが
本作においては、その場所はコンピューターサーバー内の仮想空間で
人類は既に滅亡しており、主人公たちはデータ化された「幻体」に過ぎない。
という形で、ただの模倣ではなく独自の要素が加えられている。
かなり複雑な設定・世界観であるが、綿密に練られており矛盾を感じさせない。
(SFに詳しい人からすれば、ツッコミどころは多々あるかもしれない)
そして何より設定語りに終始せず、設定を存分に活かした上での人間ドラマが本作の大きな見所。
キョウ・リョーコ・シズノの三角関係をはじめとした恋愛描写や、
水泳部再建を目指すキョウと、かつての部員である友人との和解。
更には、偽りの世界で幻体として生きる人々と、実体を持ちながら何度でも再生できる復元者。
人間とは言えない歪な存在であるが故に「命」をより強く実感させられ、両者の対比も興味深い。
物語が進行するごとに、新たに提示される驚愕の真実。それに伴う悲劇的な展開。
ストーリーの構成も素晴らしく、視聴者を飽きさせない工夫が凝らされている。
EDの入り方も毎回絶妙で、次回への興味を掻き立てられる。
主題歌に関しては、歌詞も曲も映像も本編と完璧なまでに融合しており、素晴らしいの一言。
非常に、非情なまでにシリアスなストーリーであるが、所謂熱血タイプの主人公である
キョウの存在が救いになっている。ただし、単純な熱血バカというわけではない。
哲学的な事を言い出すキャラに対して
「ここでデカルトはベタすぎる!」「バークリーも古い!ウゼェ!」
という台詞に代表されるように、意外と博識な面を持つ。
また、キョウの発する様々な熱血台詞は、絶望的な状況において必要以上に悩み苦しまないための
前向きな言動として描かれており、ただの考えなしではないことが分かる。
だからこそ、思わず笑ってしまうような台詞でも、その一つ一つはとても胸に響いてくる。
人類復活を懸けた最終決戦。
ここに至るまで、キョウ達がその身に受けてきた痛みの重さは計り知れない。
作中に度々出てくるフレーズ「幸福への痛み」。
逆に言えば、十分過ぎる程の痛みを背負ったキャラ達が幸せになれないはずがない。
本作がハッピーエンドであるのは当然だ。ハッピーエンド以外あり得ない。
そして、そんな感情論を抜きにしても、この大団円に至るまでの過程には概ね納得できる。
妥協を許さず脚本の質を最後まで維持できた点は、本当に素晴らしいと思う。
よく言われる作品の批判点に関して。序盤の退屈さ、メカアクションの低品質さについては
もう散々言われている通り、ごもっともです(笑)
賛否両論な声優の演技に関しては、個人的には花澤香菜にしろ浅沼晋太郎にしろ、
良い意味での声優らしくない自然体の演技が、キャラの魅力に繋がっていると感じた。
作品がヒットしなかった要因は色々考えられるだろうけど
一番は、複雑な設定や専門用語の多さから来る、作品への取っ付きづらさにあると思う。
用語は作中でちゃんと説明があるので、意味不明ということはまずないし、概ね理解もできる。
ただ、やはりキャッチーではない。同じ学園+SFモノでも、これ以上ない程にキャッチーだった
「涼宮ハルヒの憂鬱」が同時期放送だったのも大きいだろうか。
DVDの売れ行きも芳しくなく、全巻において購入者数が安定していたことから
その売り上げ枚数を1ゼーガという単位として揶揄されたりもした。
しかし、放送終了後、着実にファン層を拡大させていき、BD化を実現させるに至る。
公式スタッフによると、BD-BOXは約6000セットという売上を出したとのこと。
放送終了後も、多くの視聴者に忘れ去られることなく、また新規層も獲得できたのは
紛れも無く作品の持つ力であると言える。ファンとしては非常に喜ばしいことだ。
現状においても、まだまだ「もっと評価されるべき」という声が大きい一方で
過大評価なのでは?という意見も散見される本作品。
しかし、私にとってゼーガペインは間違いなく名作です。