maruo さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
青春ミステリーを現実的に仕上げたらこうなる B
原作未読
どうにも評価がしづらい作品だと思います。(ダジャレじゃなくて)
<ミステリーとして見た本作>
主人公の周りで殺人事件ばかり起こるなんてあり得ない話ではなく、日常の何でもないことに焦点を当て、謎を解決していくという話の展開はリアリティがあって好印象です。
こういうアニメが今までなぜ無かった、と思うくらいですが、これをミステリーと呼んで良いのかには疑問符が付くと思います。(ミステリーは門外漢なのでこの判断は避けておきます)
また、今までなかったからと言って、本作が魅力的であるかというとまた別問題です。
私達の誰にでも起こりうることで、なおかつ気にも留められずに過ごされることが題材となっているだけに、通常人の興味を引くかというとなかなか難しいものがあるでしょう。
これらの話を面白いと思うのは、
・ヒロイン千反田えるのように何にでも興味を持つような人
・普段から物事を考察するのが好きな人
・今まで気づかなかったことを気づかされるとハッとしてしまう人
・可愛い女の子が気にしていることは何でも気になる人(笑)
などではないでしょうか。
正直、私は上記のどれかに該当しませんでしたが、最初の古典部シリーズはそこそこ楽しめました。
また、可愛い女の子が気にしていることは少し気になるタチなので(笑)、その興味で見ていたようなものでした。
<青春モノとして見た本作>
この作品は、青春の押し売りをしていないというのが印象です。
具体的に説明しづらいのですが、友情にせよ恋愛にせよ、これ見よがしなドラマチックな展開があるのではありません。
人並み外れた明晰な頭脳、観察眼、分析能力を有しながら、何事にもやる気が起きない主人公・折木奉太郎(本人は「省エネ」と称している)が、少しずつ変化していく過程を描いています。
しかも、その変化というのも、彼の能力を発揮して有名人になるとかいう非現実的なものではなく、能力の発現を契機とはしつつも通常の人間ならありうる人間関係の中で起きています。
ヒロイン・千反田えるのその持ち前の好奇心が、その変化の直接的な要素であることは見ていて非常に分かりやすいのですが、親友の福部里志の関り方(距離を置きつつも折木に影響を与えるやり方)や福部と伊原摩耶花との関係が間接的に及ぼす影響も丁寧に描かれています。
第1話と最終話を比べれば主人公の違いは明白なのですが、一話一話の歩みはとてもゆったりとしています。
悪く言えば非常に地味なので、それに耐えられるかどうかが視聴時のポイントでしょう。
以上の考察がまるまる私の受けた印象です。やはり少し地味だったかなと・・・。
ただ、最終話の最後のシーンは、こういうのもアリだな、って思わせてくれるような終わり方でした。
人生の岐路ともなりうることを非常に爽やかに描いてくれました。
総括すると、非常に現実的な物語であったと思います。
それを敢えてやったことを非常に評価したいと思う気持ちと、現実的であるが故にいま一つ面白味に欠けるという気持ちが交錯しています。
冒頭で評価しづらいと書いたのはこういう意味です。