「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー(アニメ映画)」

総合得点
77.6
感想・評価
401
棚に入れた
1740
ランキング
607
★★★★★ 4.1 (401)
物語
4.3
作画
3.9
声優
4.1
音楽
3.9
キャラ
4.1

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ネタバレ

無毒蠍 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6
物語 : 4.0 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

ループものの成功例。押井守監督による、うる星やつらの異色作!

学園祭の準備に追われるいつもの面々ですがいつまでたっても学園祭はやってこない…
学校に泊り込んで連日連夜作業しても学園祭はやってこない…
繰り返される学園祭前日…
はたして皆がすごしてる今日は本当に昨日を過ごしてからの今日なのだろうか?

このいつものうる星やつららしくないオカルト的な要素が斬新で面白かったです。
前作ではあまり出番のなかったさくら先生も事態の謎にいちはやく気づいて終始奮闘してました。

事の発端は担任の温泉が今日という日に疑問をもったことにあるんですよね、
序盤でループ世界から退場させられましたが彼がいなかったら一生抜け出せなかったかもしれません。
この作品で重要なのは温泉が最初やってくれたようにループした一日でも
前のループとは違った行動を起こすことです、
そうすれば小さいけど何かしらの相違点が生まれてくるんですよね。

いつものドタバタ劇を維持しながらループした日常の緊迫感というのもうまくでており見応えがあります。
ループという疑念が温泉からさくらに伝わり、さくらから面堂に伝わり面堂からあたるたちに伝わります。
ループ世界では一人で抱えてても仕方ないですよ、まわりもまきこんだほうが絶対にいいって。

主要メンバーは最初のほうでこの世界がループしてるということに気づくんですよね、
そして中盤からはその世界からの脱出が主軸になっていきます。
だらだらループが続かなかったのは好印象。
ループしてるあたるたちからそれに気づき脱出を試みるあたるたち…
あたるたちのポジションが二転三転するので飽きません。

町から出れないのでメンバーは諸星家で寝泊りするのですが
修学旅行みたいで楽しそうでしたなw
ループしてる緊迫感とこういったドタバタ劇の塩梅はちょうどよかったです。

空から見た町は空飛ぶカメの上にありましたw
諸星家を中心に丸く抜き取られていたんですよね。
これはかなり絶望的な事実ですよ…
そんな閉鎖的な空間じゃ対応策も限られてくるし
それ以前に他の町は?となりますもんね。
しかも行方不明だったチェリーと温泉がカメの上で大きな石像として発見されました。
謎が謎をよぶ怪奇現象の数々…

それからどれほどの月日が経過したのか知りませんが
あたるたちはループした世界でも楽しく過ごしてましたねw
急激に荒廃していった町でたくましく生きてました。
オカルト的内容から一気にサバイバル展開になって本当に二転三転する物語だったなぁ。
メガネも後ろ髪が伸びて冒険家のような身なりでした。
キャラの身なりが変わってたりすると時間の経過というのを感じさせられます。

ここまでくるとループという印象じゃありませんでした。
だってメガネの後ろ髪にしたって町の荒廃にしたって時間の経過で変わりはじめましたから。
作中でもメガネが言っていましたが世界が開き直ったという感じでしたね。
この世界の秘密を知ったお前らを欺いたって仕方ないだろ?と言われてるような感じ。
あたるたちがループに気づいてるとはいえ何も変わりはしないのです。
ループしてるのはこの世界そのものなんですから。

そういった楽しい日常を謳歌していたメンバーですがとうとう世界に動きがあるのです…
突如として姿を消したしのぶと竜ちゃん…
今まで楽しくやってきていたのに急に消えてしまいました…というより消されたといったほうが正しいか。

諸星家を中心に抜き取られた町…
諸星家にだけ供給される電気、ガス、水道、請求書は一切なし…
最寄のコンビニにある食料のストック…なぜかストックは無限大…

まるで諸星家を中心につくられた世界になっています。
考えようによってはまるで夢のような世界ですよね。
生きていくうえでは一切の不都合がないように思える。

世界の理を無視しまくりのこの世界はまるで夢のようです。
そう、夢です…メンバーも薄々感じつつ決して口にしなかったその答え…
これは誰かが見てる夢の中なんじゃないか?
ループしてるだけならまだしも夢の中ときました。
あまりにも突拍子もなくバカバカしい答えですが
このふざけた世界を一言で説明するなら「夢」というのが一番簡潔でしっくりくるのもまた事実。

誰が見てる夢なのか?というのも簡単な話で
諸星家に都合のいい世界ですがあたるの望むハーレムではない、
あたるがちょっかいをだすしのぶ&竜ちゃんの失踪。
これはラムが見てる夢以外に考えられませんよ。
この世界はラムの「ずっと皆と一緒にいたい」という理想を具現化した夢の世界だったんです。
現にラムは面堂の「この世界をどう思うか?」という問いに対して「楽しい」と答えています。
面堂もあたると一緒にいるとバカにしか思えませんがやはり常識人ですよね。
まっさきにラムの夢なんじゃないかと疑いを持ったのが面堂でした。
さくら先生と面堂が独自に調査を重ねた結果ですね!
ただ夢という仮説については調べるまでもなく他のメンバーも薄々気づいていたというのが笑えますw

このラムの夢を具現化してあげた諸悪の根源が夢邪鬼という化物なんですが
本人は良いことをしてるつもりでしたね。
ラムの純粋な夢を叶えることに全力になっていました。
まるでラムのためにやってるようなことを言っていましたが
夢邪鬼には純粋な夢を叶えてあげたいという夢があったので
しょせんは自分のためだったんですよ、
自分自身が叶えてあげたい人の夢を叶えたというエゴにすぎません。

終盤ではあたるの無鉄砲さにしてやられたので
夢邪鬼の狙いはラムそっちのけであたるになっていますw

そもそも「ずっとみんな一緒」という夢ですが
そんなものは夢邪鬼に叶えてもらうまでもなく必然とそうなるでしょう。
この面々がバラバラになるところなんて想像できませんよ。

ラムから始まりあたるで終わるこの構成は素晴らしいですね。
押井守監督のテイストが良いふうに作用してるんじゃないかな。
うる星やつらっぽくないかもしれませんがそのミスマッチさが面白いです。
キャラが活き活きとしていて、いつもに増して個性に磨きがかかっていました。

ループというのが切欠にすぎなかったのも良かった。
そこから展開して広がりを見せる物語は飽きませんし見応えがあります。
劇場版特有のオリジナルキャラというのも夢邪鬼をのぞけば登場せず、
終始いつもの面々だけで展開していきました、
そのおかげでうる星やつらファミリーのやりとりを贅沢に堪能できる作品に仕上がってるんですよね。
キャラの個性に磨きがかかってるように思えたのもその部分が大きいかもしれません。

一つの作品として単純に面白かったです。
シリーズの中では異色作かもしれませんが私は好きですよ。

【A82点】

投稿 : 2012/08/01
閲覧 : 435
サンキュー:

5

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