jodream さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
二つの街を舞台にした群像劇
あらいすじ(6話ぐらいまで)
大火と震災に見舞われながらも、西洋の街並みを彷彿とさせるほどに復興した街、音羽(おとわ)。
幼い頃、火村夕(ひむらゆう)は妹を目の前で失った。その後、夕は孤児院に引き取られたが、そこで一つ年下の雨宮優子(あまみやゆうこ)と知り合い、親しくなった。
ある日、優子は夕に対して自分を夕の妹にしてほしいと告げた。「そうすれば二人はずっと一緒にいることができる」と。しかし、夕は、優子と失った実の妹の面影を重ね、優子を拒絶する。ほどなくして、二人は疎遠なまま別れ離れになった。
幾年が経ち、二人は再会することとなる。高校生となった二人は、空白の時を埋めるようにその距離を縮めていく。だが、優子の挙動や言動にはどこか違和感があった。夕は、優子に対して「隠し事があれば教えてほしい」と頼み、優子はそれに答え、二人が別れ離れになってからの出来事を話すことにした。その話の内容とは、二人が別れてから優子の身に降りかかった凄惨な出来事についてであった――
舞台はかわり、オーストラリアにあるもうひとつの街(モデルとなった場所は、オーストラリア南東部らしいです)、音羽。そこでは、もう一つの話が紡がれようとしていた。
火村夕の級友であり、また旧友でもある久瀬修一(くぜしゅういち)は、高校卒業後に天才バイオリニストとしてその名を馳せていた。羽山ミズキ(はやまみずき)は、従兄の麻生蓮治(あそうれんじ)から、蓮治のお隣に住む件のバイオリニスト・久瀬修一について耳にする。ミズキは、蓮治に頼みこみ、久瀬と会わせてもらうことになった。ミズキは飄々とした態度の久瀬と邂逅を繰り返すうちに、次第に恋慕の情を抱くようになる。ある日、決心したミズキは、久瀬に「好きです」と、自らの思いの丈を伝える。思いを伝えられた久瀬は、告白の余韻ではにかんだミズキとは対照的に、絶望の表情を浮かべていた。……なぜなら、久瀬には、もう、寿命と呼ばれるものが、ほとんどなかったのだから――
感想
・総評
多くの魅力的な人物が絡み合い、拡散した物語が終盤になるにつれ、一つの点に向かって収束していく姿はまさに圧巻の一言です。今作は、『ef a tale of memories』の続編であり完結編でもありますが、前作を見ずとも、今作だけで十分に楽しめます。しかし、前作の主人公らも登場し、困難を乗り越えた良き先輩として今作の悩める主人公らの背中をひと押ししたりと、結末に向かう最後の瞬間は前作の主人公らの困難と克服を踏まえてはじめて輝くため、できれば前作の視聴をオススメします。
・演出
また、演出面においても、制作会社であるシャフトの面目躍如ということで、様々な技巧が施されています。その最たるものは、メタファー、背景ないしレタリング技術を用いることで、映像作品では難しい心理描写を見事に体現していることです。その他には、OPもストーリーの展開に合わせて、アニメーションが変化したり、色彩が変更されたり、歌詞が変わったりもします。こういう細やかな演出が本作品のストーリーの盛り上がりや場面展開を、より効果的に印象付けています。
・ストーリー
とても面白いと思います。一人の主人公を起点とした作品とは違い、複数人の主人公を多角的に描き、二つの舞台がインタラクティブに作用することで、ストーリー全体に深みと牽連性が帯び、大変ひきつけられる作品になっております。また群像劇から離れても、個別に切り離したストーリーのいずれもが及第点以上なので、シリーズ通してまったく退屈しない作品になっています。個人的にとてもおすすめできます。