無毒蠍 さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
二つの世界で果たされた等価交換…どこまでいっても世界は優しさに満ち溢れている。
鋼の錬金術師TVアニメ初期シリーズその後の物語を描く劇場版。
現実世界に飛ばされたエドと錬金術世界で兄を探すアルを軸に展開していきます、
まず現実世界はドイツを舞台にしてるみたいで世界観や雰囲気はよかったです。
錬金術世界と何も変わらない住人たち。
変わらないどころか同じ顔をした人たちがゴロゴロいますw
むこうの世界とは表裏一体なのでしょうね。
現実世界では錬金術が使えないので派手な戦闘シーンは終盤までおあずけ。
それまではエドが現実世界で暗躍する集団の謎にせまります。
話の構成がとても丁寧で好感がもてました、
現実世界から侵略目的で扉をあけようとするものたちに、
兄を連れ戻すために扉をあけようとするアル。
くしくもアルの悲願が錬金術世界を危機におとしいれてしまったね。
どこまでいっても悲しき等価交換…
アルは扉を開くためにラースを捧げました、
エドも錬金術世界に戻るためにもう一人のアルと父親を犠牲にしてしまった。
しかしそれは二人が望んだことではなく、
捧げられた側が望んだことです。
もう一人のアルは余命幾ばくもないなか
自身の生きていた証を残そうとロケット工学にうちこみます。
彼が最後エドのために命を費やしたことが証明になるのか…
それは彼にしかわかりません、少なくとも最後は満足げな表情をしてましたよ。
冒頭で物理学者という男とエルリック兄弟が戦ってるシーンがあるのですが、
なんてことないただの回想シーンが今回の事件の発端になっていましたね。
まぁ物理学者も本望でしょうwよかったじゃん意味のある役どころになってて。
アニメ版から多数のホムンクルスが登場するのは面白かったですね、
ちょっとグラトニーは気持ち悪すぎましたが…
人の心を読める少女が登場します。
めちゃめちゃ重要なポジションかと思いきやそうでもありませんでしたね。
シナリオじたいにはそんなに影響のないキャラでした、
ただ物語を引き立てるという意味では大切なキャラです。
この物語が等価交換で構成されているとすれば、
もう一人のアルは命を捧げることで自身の証明を残してみせました。
しかし彼女はどうでしょう?この現実世界に絶望し錬金術世界に憧れる彼女…
彼女はその世界に行くためにちょっとした行動にでますが、
それはすべて人のふんどしで相撲をとってるようなもの。
そこに彼女の想いは通っていません。
彼女は現実世界にいながら夢をみてしまったのでしょうね。
扉が開き再会するはずのない者たちが再び出会うというのはいいよね、
一種のカタルシスを感じます!
しかしこの物語はそれじゃ終わりません。
どこまでも等価交換がつきまとうんですよ、
エドは現実世界からの侵略者たちを元の世界に連れ帰るんです。
それが短い間だけど向こうの世界と関わったエドの責任なんでしょうか…
世界と無関係ではいられない…それはそうですよね。
錬金術世界での生活があったように現実世界での生活もあったんですから。
エドにとってはどちらも現実なんです。
ほんの短い間だったけどウィンリィに会って大佐に会って…
自分の生存を信じ帰りを待ち続けてくれたものたちがいる。
彼はそれだけで一生分の充実感を得たことでしょう。
その気持ちを糧に彼はこれからも現実で生きていくんです。
アルと一緒にね!
そう、アルも隠れてついてきちゃうんですよ。
アルはエド以外の人物との今生の別れという等価交換を選択したようです。
故郷に帰りたい…
兄に会いたい…
二人が望んでいたのは些細なことだったんです。
これは本当に等価交換だったのだろうか…
この物語は純粋なハッピーエンドではなく、
哀愁ただよう切ないような希望に満ち溢れてるような終わり方でしたね。
ようやく再会できたんだ、本人たちが幸せならそれはそれでいいさ。
しかし不思議とエルリック兄弟よりも残されていくものたちのほうが
かわいそうで切なく感じるのは気のせいかな?
劇場版作品として良作だったと思います。
錬金術のつかえない世界ということで錬金術シーンがそんなになかったのが新鮮でしたね。
【A80点】