柚稀 さんの感想・評価
4.4
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
いつまでも忘れられない、あの夏の日
夏目友人帳、原作者:緑川ゆきのコミックの映画化作品。
スタッフも夏目のスタッフなので、色・空気・音どれをとっても、触れたことのあるものだった。
この作品を知ってから、夏が来るまで観るのを待ってみた。
もしかしたら、もっと暑くなってからの方がよかったのかもしれない(東北の方々はw)
終日、鳴き続ける蝉の声や、涼を届ける風鈴の音色、日が落ちてから田んぼで響き続ける蛙の合唱、遠くで聞こえる夏祭りのお囃子の音…
そんな夏特有の音色たちを思わせるほどに夏を感じる作品だった。
若干、僕が結構田舎っぽいとこに住んでるのがバレたかもしれないが、ちょっといけば、この作品のような風景が広がる土地にいる。
緑が広がる風景に懐かしさよりも“近さ”を感じる、もしかしたらあそこにも…みたいなw
彼女の名前は“竹川蛍”、彼の名前は“ギン”
彼女と彼が出逢ったのは、およそ10年前の夏。妖しものが出るという森のなか。蛍は6才だった-。
彼は見かけ人のようだがひとではない。人肌が身体に触れると身体が消滅するという術を山の神さまにかけられていた。
2人が逢えるのは夏の短い間だけ。初めて逢った年、来年の夏もまた逢おう、と約束を交わす。
翌年、お互いが約束を違えることなく再会する。
それは毎年あたりまえのように続いていく。
きっと去年より今年のほうが、来年はもっと「来年また逢おう」と言葉を交わす瞬間が辛く、淋しい思いにさせたに違いない…。
-いつからだろうか。
“キミに触っちゃいけない”が“キミに触れたいのに触れられない”に変わったのは。
どの季節も何をしていてもキミのことばかり考えるようになったのは。
逢いたくて、側にいたくてもどかしい気持ちと切なさで心が埋め尽くされるようになったのは-
…何よりも心待ちにしていた時間が過ぎ去るのは一瞬で、また逢えない時間がキミへの想いを大きく、強くさせていく。
その気持ちに気づいたとき、はじめからわかっていた。
彼も彼女も、そして全くの傍観者である僕でさえも…いつか終わりが来ることを。
信じたくなんてなかった。
もっともっと一緒にいたいって、ずっとそばにいるんだって思いたかった。
そしてお願いだから一緒にいさせてやってくれ、そんな術どうにかしてくれと真剣に願ってしまう僕がいた。
-でも、やはり叶わなかった。
-けど、叶ったこともあった。
キミに触れること。その心も身体もすべて抱きしめること。
ずっと言葉にしたら止められなくなると思って言えなかった言葉が声に出せたこと。想いを伝えられたこと。
“だいすきだよ”
山の神さまはきっとたぶん、母の優しささえも感じたことのない彼を哀れんでこんな術をかけて彼を生きさせたのだろう。
彼が誰かを愛し、そして彼を愛してくれる存在に出逢い、
心を通わせ、愛情に触れさせるために…。
彼が幸せを感じて逝けるようにと…。
いかんせん辛すぎる、悲しすぎる、切なすぎる。
どんな言葉を並べても表しきれない。
涙もろい僕は、身構えていたにも関わらず、やはり涙を止めることなんてできなかった。
辛いのに、わかっているのに何周もして、ソファーの上がティッシュの海になった。
軽く資源の無駄使いをしてしまった。
僕のような涙もろいひとは大変なことになってはずかしい思いをするのでひとりで観たほうがいいかも(-∀-`; )
本人の想像以上に長いレビューになりましたが、これからの季節にぴったりなので、ぜひおすすめしたいです。
およそ45分の中に溢れるほどの想いがつまっています。