CC さんの感想・評価
3.3
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 4.5
音楽 : 2.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
炎上問題は評価と一切関係ありません。
「文化研究部」で5人の少年少女がある現象をきっかけに葛藤していくドラマである。ある現象とは、心が入れ替わったり、感情が制御できなくなったり、子供になったりとコメディ漫画で良く取り上げられるような題材が「現象」として使われている。その題材で「笑い」を作るのではなく、「ドラマ」を描いた所は新鮮に感じました。
しかし物語の流れは単調です。作者がある現象を起こして、5人が葛藤し、話の終わりに作者がスパイスを加えて閉める、そして次の現象を起こす、その繰り返しでした。話しに出てくる「トラウマ」は現実感がなく、故に虚構としてあいがちな内容でした。それは、少し身を引いて視聴して感じたことです。
逆に、一歩踏み込むと《ヒトランダム》と《キズランダム》は中々面白いテーマ性を感じる。《カコランダム》に関しては…その辺も踏まえて見解していきます。 {netabare}
《ヒトランダム》
この回でイオリのフリをした青木が面白い事を言っています。要約すると「身体というものは我々にとって絶対の拠所となるもの、しかしその身体が人格入れ替わりで曖昧な者になってしまったら我々は我々として存在することができるのか?」
まさにこの《ヒトランダム》編におけるテーマですよね。掘り下げていくと「人とは?存在とは?」なんてドンドン哲学になっていく訳ですが、その一連の出来事を知った稲葉は絶望的な状況と捉えました。仲間を不信に感じたのもこの発言がきっかけと思います。「他人の身体を使って犯罪ができる」と稲葉は述べましたが、逆に「他人に自分のフリをされる」という事も5人の間ではできるというわけです。そういった展開もある所が、実に魅力的だと思います。
《キズランダム》
これは欲望を解放する事によって「自分」の心理を知ることができる、タイトル通り5人が傷つけ合う様子を描いています。人間というのは、本音や感情をある程度抑えて生活しています。そのモラルがあるから関係を結んでいける。そのリミッターが外れたら危ないですよね。でも、この現象は単純に危ないというだけではないのですよ。欲望解放で言った言葉は、心の内で思っていることだから「言い訳」ができない。そこが生々しく面白い所です。
《カコランダム》
これは最悪ですね。現象に面白味を感じない上、話が安っぽく感じ取れます。キャラクターをもっとも掘り下げられる現象と思っていたのですが、ただ3つの安いドラマを描いただけです。
太一が選ばれた意図、稲葉が子供になる意図がフワフワしています。回想描写がない所も寂しいです。
青木は「能天気でいるの、忘れてた」と言いました。これが過去を思い返して拾ってきたモノです。これをきっかけに「全力で生きよう」となります。なぜ、能天気でいることが全力で生きることになるのか理解できません。
ユイは、なぜ空手を辞めたの?この件に関しては、説明も何もなかったと思います。
そしてイオリは5人の父親がいた過去があります。その中で、DVする最も危険な父親との問題の結末があっさりしすぎて拍子抜けでした。
イオリは「もっとよくやっていれば」としばし口にしていましたが、小さい頃から人に合わせていた人間が何を、どのように、もっとよくやっていれば良かったのか?その辺の描写がまるで足りないと感じました。まぁそんな所です。
題材こそありきたりでしたが捉え方がとても良かったです。「現象」が起こるたびに、5人それぞれが成長していく姿は感じとれました。しかし「現象」から生まれるドラマには物足りなさも感じました。そう感じさせたのは「トラウマ」の内容もありますが、一番は言動と行動です。現実的な心理描写に、現実では考えられない行動や言動が、虚構をより虚構らしくしています。
言動で例えるとすれば「私、モブキャラみたい…」などです。なんかゾワッとします。
行動では「太一」が虚構らしい、絵に描いた主人公であることが、物語そのものに不釣り合いに感じます。自己犠牲に度が過ぎています。
あと最後に根本的な所につっこませて頂くとフウセンカズラ。おそらくフウセンカズラの正体は最後までわからないでしょうね。「楽しませてもらいましたよ、でもあなたたちにとってもいい経験ができたのでは?」って具合で終わりそうだから怖いです。私の心情は『フウセンカズラ=作者』という構図が見え隠れしていますよ。{/netabare}