Pまん さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
滝沢朗と名乗った男は、何故、自分の記憶を消したのか
視聴:2回(アニメ+映画×2)+総集編1回
皆のレビュー読んでたら、誰も書いてないんだもん。書いちゃった。
個人的な印象は、詰め込み過ぎ。
え、もちろん大好きですよ?
好きじゃなかったら、こんなレビュー書きませんって。
では、この物語のわりと本質的なトコロ、掘ってみますよー。
滝沢朗と名乗った男は、何故、自分の記憶を消したのか。
本編中に、登場人物の言葉で答えらしきものが提示されていますけど
まさか本気で信じたりは、してませんよね?
以下、アニメ+映画×2のネタバレを含みます。
ネタバレはアニメと映画で一応分けてますけど、鑑賞済の方のみどーぞ。
{netabare}
とはいえ、お楽しみは後の方にとっておきましょう。
まずは100億円。やっぱりみんな、コレ気になってるみたいですね。
ノブレス・オブリージュ。本作中では『持てる者の義務』ですね。
感覚的には、100億円=持てる者なんでしょう。
でも、この100億円、ホントはお金じゃないとボクは思うんだよね。
たぶん、ジュイスに働いてもらうためのポイント。ただの数字。
もちろんお金としても使えるんだけど。便利だからね、お金。
お金を使って何かするのではなく、目的のためにジュイスを使う。
コレが、アウトサイドが望んでいた本来の使い方じゃないかな。
次、ちょっとわかりにくいけど、ヒロインが牛丼かけられるトコ。
いらっとするシーンだけど、こんなことあるわけないと思ってる?
実際に社会に出ると、もっとひどい事を何度も目撃・経験できますよ。
それはさておき、ここで描いているのも、ノブレス・オブリージュ。
『位高ければ徳高きを要す』ですね。
せっかくなので、牛丼をかけさせた側の事も書いておきましょう。
たぶん、卒業旅行で面談を欠席したから嫌がらせしたのではありません。
重要なハズの面談を欠席する子がどんな子か、興味あったんですよね。
そして期待は裏切られた。2重の裏切り。描写が丁寧だなーと感じます。
牛丼をかけるよう指示する人、実行犯、『事件を期待する』女子社員。
まあ伏線のひとつですよね。こういう描き方は上手いなぁ。
次いきましょう。裸で登場。
まず、裸は持たざる者の象徴でしょう。ニート軍も裸ですからね。
『寒くないですか?』『寒いですよ』
思わず、ヒロインは帽子・マフラー・コートを貸します。
ココは推測ですが、冒頭、No9が裸で銃を構えたのはNo1の罠。
No9が自身の記憶を消した直後、罠情報を吹き込んだのでしょう。
お前はテロリストだったんだよ、ってね。
携帯で正気に戻ったのは、サポーターのおかげです。
正気に戻ったというより、もう一度記憶を消されたというのが真相かな。
ジュイスが『あのままフェードアウト』と言っていますから
自身の記憶消去から、しばらく時間が経過していると考えられます。
同じアパートの住人が、No9を見て気軽に挨拶をしているのも
テロリスト風に仕立てられたアジトに滞在していたことを示します。
『こりゃ絶対だれかにハメられてるな』とはNo9のセリフ。
丁寧な仕事、お疲れ様です。まー違ってるかもしれないけどね。
通行人がズボンを差し出すシーン。ココすごく好きです。
ヒロインはこう考えてます。『何でズボン貸すわけ?訳わかんないし』
当然です。たぶん日本では起きません。欧米だからじゃないかな。
欧米、おそらく富裕層におけるノブレス・オブリージュの意識の高さ
を感じさせるシーンなのだと思います。No9は頼む人を選んでますし。
咲さん、あなたがやった行為も、ノブレス・オブリージュですよ。
では、冒頭の記憶の消去について触れましょう。
No9は、何故、自分の記憶を消したのか。
作中では『助けた人と協力した人の双方から裏切られた』と語られます。
え、逃げたの?No9はそんな子じゃないよね。
落ち着いて考えてみましょう。何故、映画の記憶は消えてないのか。
映画の記憶が必要だったから?自分の記憶だけが不要だったから?
ボクは、こう考えます。
記憶を消す前のNo9は、客観的な感情を欲したのだと。
だから自身の感情は切り捨てた。記憶と共に。
自分の感情に惑わされないように。映画の記憶だけを頼りに。
アニメのラストで、王様になる時の決意。それと同じ動機です。
ループしてますよね。これが『上がり』なはずはありません。
{/netabare}
ここから先は、映画版を含むネタバレ。
{netabare}
さて、一気に飛んで、映画2の終盤。No1との会話シーン。
『愛が無い気がする』
コレ、字の通りに読んでもいいんだけど。
自身の感情を記憶と共に封じた事があるNo9の口から出た言葉です。
感情も、やっぱり必要だって意味ですよね。
誰かを生贄にしていたのでは楽園にたどり着けない。そういうことです。
次は、楽園についてです。
主人公は楽園へ行く方法を発見しました。
ここまでちゃんとついてきてたら、もうわかりますね。セリフを引用しましょう。
『上がりを決め込んでいるおっさんたちは、今すぐ、必死でためこんできた
ものを捨て、俺たちと一緒に、新たな楽園に旅立つ決意をしてほしい』
この言葉、あなたの胸には今、どんな風に響いていますか?
No1を否定したのですから、既得権益の再分配なんて話ではありませんよ。
残念ながら楽園は、1人の力では行けないんですよね。
映画のラスト。
アウトサイドは全員を勝者としたのに全員の記憶消去?明らかに変です。
騙されてはいけませんよ。記憶を消去されなかった者が勝者です。
え、2度目だから効かなかった?違いますよ。
アニメの冒頭とラスト+放送前、たぶん記憶は3回消えてますからね。
最後、シーンはちょっと戻るけど。
『払うより、もらう方が楽しい社会』
主人公のセリフですけど、うーん、わかりづらい表現ですよね。
『お前なんで働いてるの?』昔、会社の先輩が、ボクに聞いたんです。
当時はそんな事、真剣に考えたことなくて、親が借金抱えてたから
なんとなく『家を支えるため』って答えたんですけど
その先輩は『自分のため、お金のためだろ』って言うんですよ。
でも、ボクにはピンとこなかったんですよね。
コレ何年も考えてて、まだ答えは出てないけど、今ならこう答えます。
『誰かを幸せにするために働いている』ちょっと夢見すぎかな。
でもボクは、主人公のセリフって、そういうことだと思っています。
おまけ。
アウトサイドはサッカー好きだと作中で語られています。
各セレソンには番号が振ってありますよね。
12番のセレソンがサポーターなので選手ではありません。
では他のセレソンはどういうポジションになるんでしょう。
これだけで1本レビューが書けますね。本題から逸れるのでしないけど。
次は、そういう視点で見ると、また違った楽しさがあるかもしれませんね。
それでは。
皆様の心の奥に『ノブレス・オブリージュ』が根付く事を切に願います。
{/netabare}
ネタバレのネタバレ。やっぱり無粋かな。
{netabare}
何度も見たわけじゃないから確信はないけど、テーマは意識しました。
表テーマ『ノブレス・オブリージュ』
裏テーマ『ミスリード』
信じていいのは、登場人物自身の行動描写と、自身の発言だけ。
これを心がけると、ある程度わかりやすくなると思います。
こう考えたんじゃないかな?という発言は、裏があると思っていい。
No4の刺殺、No5の光が消える演出、No11のジョニー狩り
どれもミスリードを誘っています。
携帯の履歴は、必ずしも目的と一致しません。
たとえば『タンクローリー事故誘発』→『No9の足止め』など。
『豊洲をミサイル攻撃』→『飛行機撃墜』搭乗予定者を狙っていた。
このアニメでは、飛行機に偶然当たるなんてありえませんよ。必然です。
60発のミサイルの目的地が豊洲を含むのも、それを示唆しています。
No9さん、咲ちゃんと飛行機乗る前に携帯使わなくてよかったですね。
『記憶の消去』→携帯の履歴から、記憶の消去は咲に会う前日の昼。
アニメ冒頭の記憶消去シーンはNo9自身の依頼ではないという論拠。
また、迂闊な月曜日から日があるので絶望が直接の原因ではないと推測。
記憶を消した時点では、No9はこの日に帰国する予定だったハズ。
実際には帰国せず、翌朝、全裸でテロを実行しようとしていた。
自分から全裸になっているので、自分の意思でテロ行為に及んでいるが
履歴と行動の辻褄が合わないので、誰かの意思が働いた結果だと推測。
ジュイスを介さずに記憶を消せるのは、作中ではサポーターだけ。
No5の記憶消去は履歴に残ってませんからね。
それぞれのセレソンの行動原理もあわせて考えるとわかりやすいかな。
たとえば、No1は直接的・間接的問わず、他人にリタイヤを強いる。
ゲームを上がる方法は、1つではないからね。
目的が監視だけなら、わざわざアメリカまで足を運ばない。
No1は絶対何かしてる。ヒントは作中に描かれてるハズ。
ボクがココに目をつけたのは、No9が鉄砲を持つ必然性を考えたから。
伏線だらけなんだから、意味もなく鉄砲なんて持たせないよね。
あと作中の『ニート』は『幕末志士・浪人』をイメージしてるっぽい印象。
まー、あまり関係無いけど。
{/netabare}
更新履歴
2012/07/08 初期投稿
2012/07/09 ネタバレのネタバレ・更新履歴・視聴回数を追記