どうまん さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
単体としては面白い話
●1期から通しての感想
両原作未読での視聴。
1期でこつこつと積み上げてきたキャラクターの内面/目的を、2期に入って諸々の出来事に重ね合わせて一気に物語を加速させ、前作『stay night』へと繋げている。
作画の良さは相も変わらず、話のテンポはむしろ各陣営の脱落等のイベントが増えた事で良くなり、1期では不透明だった主人公切嗣の目的や思想に関しても、2期で数話を割いて視聴者に分かるよう説明がなされている。
総じて1期以上に観やすくなっていて、一時に1期2期と連続で視聴すれば、2期からの物語の加速もあって、相当斜めに構えない限りは素直に「面白かった」と思わせるだけの力がある。
エンタメとして見る分には申し分ないアニメである。
●話の内容
聖杯を真剣に奪い合っているのでスリルがあり、各陣営のやり取りや各キャラクターの人となりの描写に割く部分が大きいこともあって、『stay night』よりも、遥かに物語としては良く出来ている。
ややあざとさはあるもののライダーペアの辿る結末には見ていてぐっと来るものがあるし、切嗣という人間を通して「正義」の危うさを説く話として見たり、あるいは思春期の少年よろしく悩む綺礼の自分探しの過程の話として見る事ができる等、複数の切り口から物語を見れるため、話が「聖杯を奪い合う」という、ごくごく平面的な物にならず、奥行きのある構造に仕上がっている。
これはキャラクター造形の妙によるところが大きいだろう。
しかし終わり方、つまり繋げ方についてはいくらか不満が残る。
最後の数話では聖杯が現れ、望みを叶えるだの何だのと揉めた挙句、セイバーによって聖杯は「破壊」される。
ところが前作を見た人は知っているように、街(の一部)は火に包まれて廃墟同然となる。
その過程や原理こそが前作に繋がる箇所であり、また聖杯というものを知る上でもキーとなるのに、その辺りの説明は一切なされていない。
ただの物語として切り離して考えようにも、1期であれこれと緻密に戦略を練って願いを叶えようとする場面が出てきていたために、この唐突な終わり方はあまりに都合が良すぎるように思える。
『stay night』冒頭にあるセイバーとギルガメッシュの戦闘の描写も無く、むしろセイバーがどこへ消えたのかもよくわからない。
完全に前作と切り離して見ればこれはこれで良いが、前作に繋げるスピンオフとしてはやや結び方が弱いように思えた。
●とはいえ
潔くバッタバッタと登場人物がリタイアしていく2期のシナリオは見ていて面白い。
おそらく、設定のこまごました部分を考慮せず、またラストの展開の不親切さに目を瞑れば、十分に楽しめるアニメになっている。