どうまん さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
果汁2%な粉ジュース
●感想
OVAは未視聴。
瀬戸内を舞台にした女子高生達の、それぞれが持つ夢を追うというお話。
夢をテーマにした話には、努力や挫折を経て掴み取る過程を描くタイプと、過程よりも努力又は挫折を集中的に描写して夢のなんたるかを描くタイプがある。
前者はスポーツ漫画などによくあるパターンで、目標も努力も挫折も明確なのが特徴となっている。
対して後者は、これはヒューマン系の洋画によくあるのだが、夢自体の内容よりもその輪郭(夢とはどのように抱き目指すべきか等)を重点的に描く。
『たまゆら』は、どちらかと言うと後者の側に近い印象を受けた。
●主題?
作中では、主人公らはそれぞれ夢を持ち、これといって努力している描写は無いが、目指しているように描かれている。
この年代の子にとっての夢とは移り変わりの激しいもので、興味があるから飛びつくという程度のものでしかない。
その辺りは作中でも触れられていて、夢の中身そのものよりも、なにがしかの夢を持って追おうとする様子の方が、見ていて強く印象に残る。
なので先に挙げたように「夢とは移り変わるものなのだ」という主題のもと話が進むと言えなくもないが、しかしあまりにも当たり前すぎて、かしこまって主題と言うにはパンチが弱い。
●『たまゆら』とは...?
そもそもこの『たまゆら』が何の話であるのか、今一つ良くわからない。
事件も無ければ取り立てて大きな起伏があるわけでもなく、変化は微々たるもので、登場人物はみんないい人ばかりである。
夢は、高校生らしい瑞々しさで満ちている。
全て観終わって思ったのだが、現実の高校生と夢と比較すると綺麗すぎると言うか、純粋な部分は上手く掬い上げられているが、人間らしい生々しい部分がすっぽり抜け落ちている。
彼女らには「現実」が無く、どこまでも澄んでいて綺麗である。
それがどうにも作り物めいた感じを生み出しているように思えて、果物のえぐみを排した粉ジュースがごとき味の希薄さに繋がっているのだろうと考えた。
おそらく、努力や挫折の過程が無いのが大きい。
完全に過程を排して結果だけが表に出てくるので、「~という夢を持った人間」よりも「~という夢を持つというキャラクター」に近い印象を与えかねない。
このように根が浅いため、誰かと誰かの夢がそっくり逆に入れ替わっていても物語としては矛盾無く成り立つはず。
…もっともこれはひどく穿った見方であるから、例えば何も考えずに見るべき青春のんびりアニメとして受け入れれば、それはそれで何ら問題は無い。
ただどちらにしても毒にも薬にもならないのは変わらず、そうなると物語や設定に奇抜さや関心を引く所が無いのが際立って、文字通り「漠然と見るだけ」の内容の薄いアニメになってしまう。
音楽は素敵だけれど。