退会済のユーザー さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.5
作画 : 3.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
まずい食材はない、まずい料理があるだけだ。
女『この料理、見た目はギトギトのドロドロだけど、意外と薄味だね』
男『食材が物凄く濃い味だから、あえてそう作ったのかもね』
女『でもこれだと食材の良さが消されてしまってるような気がする・・・』
男『有名なミッシェル・サラゲッタの言葉にこんなのがあるよ。
【まずい食材はない、まずい料理があるだけだ】』
女『・・・つまりこれは料理の仕方を間違えたということ?』
男『そうだね。はっきり言って失敗作だね』
女『そこまで酷いとは思わないけどw・・・あ、シェフが来たよ』
年老いて今にも倒れそうなシェフ『今日の料理はいかがでしたでしょうか?・・ゼエ・・ゼエ・・』
男『・・・お、美味しかったです』
女『・・・ヘタレ(ボソッ)』
男『(こんな状況で他に何て言えばいいんだよう)』
{netabare}
さて、ゲーム版(食材)とアニメ版(料理)の違いはどこにあるのでしょう?
実は大きな違いが2つあります。
【選択肢が出てこない】
当たり前過ぎて笑われてしまいそうですが、『君望』においてはとても重要なことです。
普通この手のゲームに慣れている人は、
『この選択肢を選べば○○ルートに入るな』なんてことを考えながらプレイする訳ですが、
この作品ではそんな無粋なことをしてはいけません。
何とも悩ましいシチュエーションで出てくる何とも悩ましい選択肢。
これが出て来た時、プレイヤーは立ち止まって考えます。
その一瞬、プレイヤーは孝之の気持ちに近づくことが出来るのです。
ところがアニメ版ではこうはいきません。
孝之が勝手に話を進めていってしまいます。
もともと彼は感情移入しにくいキャラなので、
結果的にどうしてもストーリーを醒めた気持ちで見てしまうことになります。
【視点の変更】
ゲーム版は孝之視点、アニメ版は第三者視点。
この差はとても大きいです。
序盤こそ第三者視点を生かし、他のキャラの動きを細かく追うことが出来て良かったのですが、
孝之の細かい心情表現が必須な後半は完全に裏目に出てしまいました。
そもそも『君望』は孝之の成長物語なのです。
『こんな状況でどっちを選べっていうんだよう』などと心の中で弱音を吐き続けるヘタレ孝之が、
どうやってひとりの大切な人を選び、もうひとりの大切な人の元を去っていくのか。
その心の葛藤こそがこの作品の最大の見所なのです。
『大切な物を失った時、人は大きく成長することが出来る』
これはアージュの作品に共通する基本コンセプトであって、
それを表現する上で主人公のモノローグというのはとても大切なものとなっているのです。
このように『君が望む永遠』は制作者(シェフ)のちょっとしたさじ加減の間違えで、
良く似てはいるものの全く別の作品(料理)になってしまいました。
どちらが好きかはそれぞれの好みによると思いますが、
私にとってはアニメ版は『味に深みがない料理』に思えてなりませんでした。
ただ序盤(特に第4話)はわりと出来がいいので、
手っ取り早く『君望』がどんな話なのかを知りたい方はアニメ版を観てみるといいでしょう。
そして本当の『君望』が知りたいという方、ぜひゲーム版をやりましょう。
{/netabare}