どうまん さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
海外映画的。喜劇、仄暗いコメディ。
●物語に関して
古いアメリカの映画のアニメリメイクという事のようで、確かに海外映画を見ているような、起伏のあるプロットになっている。
とりわけハリウッドっぽさを感じたのがこの物語において先の展開を決定づける上で重要となっている「奇跡」の扱い方で、一般的なプロットではある種の必然性をもってこうした奇跡的な出来事や偶発性を設けているのに対し、この作品ではあくまで「偶然」であると劇中でも言い切っており、奇抜で偶然性の高い展開にありがちな「出来過ぎた感じ」は希薄となっている。
●主題に関して
物語自体は、一応は特定の『家族』や『繋がり』といった主題をメインとしているものの、それらは必要以上に強調されてはおらず、基本的に最後までドタバタ劇を繰り広げている。
それは良い事なのかどうか、正直判断しかねた。
第一に、主人公達がホームレスであるという必然性があまり感じられなかった。
もっとも必然性が薄いというだけで、ホームレス生活を知らない立場で観た限りではリアリティのある描写に思えたし、またホームレスであるが故に生じ「得る」展開から先に繋がる場面もあったため、あくまで設定として受け入れるなら、良く出来てはいるのだけれども。
第二に、先に書いたように『ハリウッド性』が強いので、特定のテーマを引っ張って表現するにしても、どうしても中途半端な形になってしまう。
結局はコメディであって、所々で描かれる陰の世界の仄暗さはただの演出に過ぎないのだろう。
その点もかなり海外映画的で、何がしかの深いテーマを求めて観るには適さないと思われる。
これら二点はただ観ただけでは分からないところだったので、この作品の世界をより深く知るには、他のメディアでの補完が必要なのかもしれない。
とはいえテーマ云々を抜きに単なる娯楽映画として表面的に捉えれば、これは良く出来た喜劇に仕上がっている。
●キャラクターに関して
そこまで重い話でないというのもあって、必要以上に過去の掘り下げや動機の明確化はされていない。
造形と表現が割合洗練されているために、外面的な行動や僅かにある回想を辿るだけで十分にキャラクターの内面を窺える。
敢えて触れ過ぎず、また重くもしないというところが、大きなポイントなのかもしれない。
○総じて
作画は良く、内容は変に重くならずいい具合に喜劇として仕上がっている。
冬の東京の「寒さ」がよく伝わる丁寧な描写、脇役として出てくる豪華声優なども楽しめる要素。
アニメとしては珍しい、海外映画的なコメディとして成功している映画である。