maruo さんの感想・評価
3.2
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
大人に向けた作品 B
アニメミライプロジェクトの作品です。
アニメミライとは、正式には「若手アニメーター育成プロジェクト」といい、文化庁が主導し、2010年から実施しているアニメーターの人材育成事業のことです。
労働環境の悪化、過度の海外委託、低収入・長時間労働が、人材の使い捨て、喪失につながっているということが背景としてあり、日本の将来を担うアニメーターを育成するということを主な目的で行われるのが本事業です。
その他副次的目的もあるようですが、詳細はWikiでご覧になってください。
私たちの見ているアニメは、アニメーターの劣悪な労働環境の上に成り立っているもので、製作現場はいつも危機的状況にあるようです。
この企画の恩恵が及ぶのはごく一部だとしても、お役所にしては良い仕事だと思います。
さて、アニメミライばかり語ってしまいましたので、そろそろ本題に入ります。
本作品はイジメをテーマーとしており、いじめを受けている「ドンチャン」に対して、主人公の「ボク」は傍観者の立場にあります。
ボクはいじめられるのが怖くて、ついついしらんぷりをしてしまうという、どこにでもありうる物語です。
大人たちは、いじめを見過ごすのは、いじめをするのと同じくらいいけないことだと言います。
しかし、大人たちはその言葉を発しただけで免罪されると思い込んでいるとしか言いようがありません。
後はいじめがあるとは分からなかったと言いさえすれば、実際にいじめに介入するということをしないのです。
現実問題、我々も同じような立場にあると思います。
私は子どもがいないので偉そうなことが言える立場ではないのですが、自分の子どもがいじめられる側にも、いじめる側にも関わっていなければ(傍観者の立場であれば)それでいい。
そのように考えているのではないでしょうか。
私だったらまず間違いなくそのように考えてしまうと思います。
{netabare}この作品では親や教師は具体的に関わってきません。
大人は一人出てきますが、全く子ども達とは接点のなかった昔気質の一般人です。
その大人がいじめの問題解決に役立ったかというと、必ずしもそうではありません。
いじめられているドンチャンはある時勇気を振り絞りますが、それが解決に結びついたかというと、それもまたそうではありません。
明確な結論というのをこのアニメでは描いていないのです。
押し付けがましい回答を用意するのではなく、視聴者それぞれに考えさせるという内容になっています。{/netabare}
この作品を見ていじめについて考えよう、というのは非常に簡単ですが、実際に考え、実践に移すのはとても難しいことです。
しかし、考えることすら放棄するのでは、第一歩を踏み出すことが永遠に不可能になってしまいます。
これを子どもに見せて考えさせるのではなく、大人である我々が見るべき作品だと思います。
そこから何を考えるのかは我々次第です。