どうまん さんの感想・評価
3.3
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
すまし汁のような作品
●率直な感想
「ヒロインがみんな主人公が好き」という実にありがちな構図がベース。
しかし愚直にその模様を描くのではなく、物語が進む過程で各人物のそれぞれの叶わない恋が明らかになるという、視聴者と主人公の目線が等しい描写形式をとっている。
これにより、一筋縄ではいかない恋愛模様を描くことに成功している。
いわゆるハーレム物のような「複数人の女の子が主人公と一緒にいるのが半ば自然のものとして受け入れられている」という形ではないので、良くも悪くも、等身大な恋愛を描けていると感じた。
●登場人物の内面
誰が何を思って特定の言動をするに至ったかという描写は、割と頻繁に出てくる。
特に好きだという想いを告げられずに、本心でない行動に出てしまう登場人物達の機微はとても良く描けている。
こうした初々しさが、この作品の最大の良さでもある。
このように各登場人物の「現状の」心情は良く伝わるのだが、一方で、なぜ恋をするに至ったかという動機づけが今一つ弱い。
ヒロインに対する主人公の「恋心」も同様、どうして誰それが好きなのかという理由がはっきりとせず、場合場合によっても変わり、しかしメインとなるのはこの主人公の心情であるため、良いか悪いかは別として、極めて非物語的な話となっている(現実の恋愛が必ずしも100%の好意同士とは限らないのと同じく、主人公も、取り立てて特定の誰かでなくてはならないと思ってはいないように見える)。
おそらくここで賛否が分かれるのではないだろうか。
つまり、登場人物の掘り下げ方が今一つ足らず、またドロドロの関係にありながらも結局のところクセの無い善人でしかなく、感情移入がし辛い。
加えて各キャラクターは漠然とした「恋」という動機でのみ行動をするため、物語としてはどこかアクの足りない澄んだ様相を呈している。
けれどそれ自体は無下に否定されるべき物ではなく、理由づけの無い淡い恋自体が動機として十分に働くと見れば、純粋な乙女達と主人公の織りなす甘酸っぱい青春ドラマに類すると言えそうである。
●取り上げられたテーマ
一番大きいのは「近親愛の形」だろうか。
「きょうだいだから」という見方と「きょうだいだけど」という2つの見方の対照が物語中盤から現れてくる。
それ自体は、話を単純な恋愛物語に留まらせず、良いと思う。
しかしその素材はお世辞にも上手く扱えているとは言えず、特定の解答が提示されることなく空中分解してしまった印象を受けた。
この作品は1度にいくつかの事柄を描こうとしてどれも中途半端になってしまっているきらいがあり、その点で、敢えてこうしたテーマをプロットに持ってくる必要は無かった様にも思える。
●音楽
OP曲と劇中の音楽は、しめやかな雰囲気ととてもマッチしていて良い。
○こんな人向け
・初々しい恋のドラマを見たい
・適度にドロドロして、適度にさっぱりした話を見たい
・はっきりしない主人公にイライラしない