にゃんにゃ さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 3.0
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
心を揺さぶる光と闇。彼は、頑なに願う。
率直に、めちゃくちゃ面白いと感じた。
にもかかわらず、低評価の人かたくさんいるので驚いた。
もしかしたら、「エヴァ」に対する評価の別れ方に通ずるのかもしれない。
この作品、前半と後半で雰囲気がガラッと変わる。
勿論その変化に違和感はない。
まるで「トラどら」のそれのように、観終わってはじめて気づくような、自然な展開。
前半はバトルシーンが多く、王道の冒険活劇といった感じ。
しかし後半、話が核心に迫ってくると、バトルシーンもほぼ無くなり、宗教的な話に様変わりする。
そんな重い雰囲気の中でも、複数のストーリーが同時進行し、最期の地「胎動窟」へと向かう様には興奮せずにはいられなかった。
そして、最終話。残された人々の前向きな想いに、
気付くと涙していた。
さて、このアニメを語ろうとしたとき、特筆すべきはどこか。
まよわず後半の展開を推す。
…と、ここからは個人的な解釈。勿論監督が何を言いたかったのかなんて、知る由もないし、興味ない。
ただ、自分はこう感じ、引き込まれた。それだけのこと。
ついでに言うと、一回観ただけで、理解できていないところも多いので、かなり的外れなのかもしれない。と、言い訳しておくw
先に宗教的とは言ったが、わかりやすい言葉で言い換える。
生と死の対立。
作中では、死のイメージの具現として様々なキャラクターが登場する。
そして、そのそれぞれに異なる死の解釈が存在する。
たとえば胎動窟に巡礼する人々は、死を救いと考える。
また、クジレイカやフルイチは、生きることを憎しみと見つけ、死を肯定する。
数え上げればキリがない、死の概念。
そして、そのすべてに向き合おうとするのが主人公アキユキだ。
彼は、徹頭徹尾生きることに固執する。
様々な「死」と向き合い、旅を続ける。
そして気づく。死の概念は、すべての人の心の中に存在する。
そう、アキユキが戦っていた「死」は、彼自身の心の中にあった。
彼は、自身の「心の闇」と戦っていたのだ。
ところで、そもそもの始まりは何だったのか。
1話中盤、彼はバス爆発事故に巻き込まれ、そこで、ヒルコと呼ばれる得体の知れないものに寄生されることとなる。
ヒルコを植えつけられた者は、その力を制御できず自我を失うと石になってしまう。つまり死ぬ。
そこから、彼の生と死のはざまを彷徨う冒険が始まる。
思えば、このヒルコこそ、心の闇であり、死の象徴ではないか。
アキユキがヒルコを植えつけられるきっかけになった、バス事故を企てた少女はあの時こう言った。
「あなたなら大丈夫です…」
それは、すなわちアキユキなら心の闇に打ち勝てるということではないか。
また、ナキヤミがしばしば口にする言葉
「生きたいか?ならば、そう願え…」
これこそ、心の光への問いかけだろう。
そして、この心の揺れが、ヒルケン皇帝そのものではないか。
皇帝の「死」とも「生」とも取れない謎めいた立ち位置は、まさにアキユキの迷う心を表わしていた。
ただ、これは観終わってから湧いてきた感想に過ぎない。
堅苦しい話は興味ないや、と敬遠はしないでほしい。
観ているときはただただ面白くて次が気になって観ていたというのが正しい。
特に1話、アヴァンからOP終了までの惹きは半端ない。
ものの5分といったところだが、これを観て興味わかない人がいるのかと思うほどの出来。
つまらなければ切ればいい。最初の5分だけでも観てほしい。
きっと惹かれるから。