STONE さんの感想・評価

4.3
物語 : 3.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態：観終わった

「残念」が生み出す、独特の空気感

　原作は未読。
　ストーリー自体はシンプルなだけに、キャラの魅力とそのやりとりの面白みで成り立って
いる印象の作品。
　ただ、シンプルなストーリーと書いたが、最後にちょっと面白い仕掛けが施されていた。
　「実は小鷹の10年前の親友ソラは夜空だった」という設定自体は途中から誰にでも
安易に判るように描かれていたが、最終話において、最初から小鷹のことに気付いていた
夜空の視点からこれまでの流れを描く演出は、同じシーンでも違った感じに見えて、
なかなか面白いものだった。
　この最終話で描かれたシーン以外でも、ソラとタカのことが描かれる以前の序盤などは
改めて見返すと、結構印象が変わってくる。
　ストーリーの妙が売りのシリアス系作品だと、よくこの手の仕掛けが見られることが
多いが、ギャグ色の強いコメディ作品でこういう面白みが味わえるとは思わなかった。

　キャラに関しては、それぞれが魅力的であるが、既存作品のキャラに似ていると言えば
似ているキャラが多い。
　ただ、これに関しては一種のパロディとしてやっているんじゃないかと思えたため、個人
的にはあり。

　友人のできない者同士が集まって、「隣人部」という友達を作るための部を作るという
設定だが、ややこしいのは「集まった部員同士で友達になる」のではなく、「友達を作る
ための技術を磨く」ための部ということ。
　そのために部活で色々とやるのだが、結果がますます残念な方向に向かっていき、それを
見ると逆に「何故彼らに友達ができないのか？」が判る構図になっており、なかなか
面白い。

　この「残念」という要素だが、「友達」と並んで、この作品のキーワードになっている
ようで、コメディ作品としての面白さや笑いの要素を出しつつも、せつなさ、やりきれ
なさ、もの悲しさといった負の要素が濃い独特の空気感を持っており、それがこの作品の
個性を位置付けているような感じ。

　この空気感に関しては、まず夜空に対応が思い出される。夜空だけが小鷹との過去を
知っているため、小鷹、もしくは小鷹と他のキャラとのやり取りに過剰な反応を見せる
ことがあるが、これがコミカルなシーンに水を差すようなシリアスなものであるため、
なんとも言えない雰囲気になることが多い。
　あと、あるキャラが暴走した場合など、通常のコメディでは他のキャラがそれに対して
ツッコミを入れる場合が多いが、ツッコミというのはある意味、一緒にのってくれている
とも言える。
　しかし、この作品の場合、他のキャラがドン引きしている場合が多く、それが独特の
気まずい雰囲気を出しつつ、改めて暴走キャラが残念な存在であることをうまく印象づけて
いる。

　「友達」の方に関しては、「皆で熱心に部活動をやっていれば、もう立派な友達
じゃないか？」と思えるのだが、本人達の弁によると、部員同士は友達ではないらしく、
改めて友達の定義を考えてしまう。
　ただ、口ではそう言っていても、部活での楽しげな様子を見ていると、本人達の自覚、
無自覚は別にしても、やっぱり立派な友人関係を築いているとしか思えない。
　特に小鷹などは、同じクラスの普通の男性より女友達に恵まれているように見える。
なんかタイトルに偽りありといった印象で、本当は「僕は男友達が少ない」じゃないの
かな。

　この作品で取り上げているのは友達作りだが、この作品に限らず男女が親密になると
どうしても恋愛との兼ね合いが問題になってくる。
　「恋愛感情のない男女の友情」というのは自分自身でも経験あるし、回りでもそういった
例を幾つも見ているが、この手のテーマを内包した作品は、大概は話の面白さから結局は
恋愛感情が出てくる。この作品も星奈の小鷹に対する感情などは、もはや友情と言うより
恋愛感情に見える。
　ただ、そうなるとこの作品の主軸テーマである「友達作り」という部分が若干曖昧に
なっているように思える。
　特になまじ過去に親友関係であった小鷹と夜空なんかは今度どういう関係を築いていくの
だろうか？。