「青い文学シリーズ(TVアニメ動画)」

総合得点
61.3
感想・評価
159
棚に入れた
903
ランキング
5476
★★★★☆ 3.5 (159)
物語
3.7
作画
3.6
声優
3.4
音楽
3.3
キャラ
3.4

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ネタバレ

aitatesoka さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

近代文学の視覚化は貴重だが・・・出来不出来の差が大きい(長文です)

近代日本文学の名著をアニメ化するという大胆な試み(無謀な試みともいう)の作品群でありアニメの尺にいかにして収めるかや原作との折り合いをどうつけたかが評価の分かれ目となっていると思う

第一弾の人間失格は文学に興味のある人間なら誰でも知っている小説であり現代で言えば厨二病じゃ無いかといわれかねない作家太宰治の代表作である

原作の小説を4話のアニメ枠に押し込んでいる割にはうまくまとめられておりはしょったり改変した部分も何とか自然に収めていると感じた

このアニメは舞台が昭和初期から第二次大戦前夜までの時代が舞台になっており当時の暗い社会情勢と密接につながっている為、時代背景がわからない場合は単なる鬱傾向にある主人公の話と見られてしまうかもしれないので当時の世相を考慮してみる事をおススメする
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第二弾の桜の森の満開の下を視聴し終わった
原作未読だったのだが青空文庫にて公開されていたのでそれを読んでの視聴となった

原作者の短編小説を元に製作されているようで話の大筋は原作準拠となっているが、かなりギャグアニメ的アレンジが追加されており原作のイメージから乖離していると感じた。

この小説には原作者の東京大空襲時に見た風景が下敷きとしてあるそうでそれを考慮するなら純粋にホラー要素を拡大したほうがよかったのではないかと思ったのが視聴後の感想である。
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第三弾、夏目漱石の小説こゝろをアニメ化した作品を視聴した

この小説も青空文庫で公開されているので原作と比較しながら視聴してみた

小説は三部構成となっているがアニメではこのうちの最終章のみを題材にして製作されており小説のエッセンスのみを抽出し人物描写に独自の解釈をつけて作成されたようである。

アニメにおいて重要な登場人物のビジュアル面でのヒントが小説にはほとんど描かれていない為か製作側の自由な発想でデザインされているがあまり妥当な描写になってはいないような気がした。

特にK氏の風貌にいたっては繊細なメンタル面と大入道然とした体躯がまったく合っていないように感じられ物語の進行に小説とは違った印象を持ってしまった。

しかも後半の冬編では小説では語られていないK氏の内面やお嬢さんの行動などを描いたまったく別の物語と言っていい味付けを行っており、もはや原作とは別の物語と言う印象がつよく小説版は原作と言うより参考文献ぐらいの位置では無いだろうか

視聴後思ったのはアニメと言うコンテンツによってアプローチにするにはこの原作は少々難しすぎたようなそんな印象だ
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第四弾、太宰治原作の走れメロスを見終わった

元となったお話は19世紀のドイツの詩人が作った「人質」という詩が元ネタだそうで太宰治はこの詩を日本人にもわかりやすい言葉で表現して太宰独自の解釈はあまり付け足すことなく発表した作品のようだ(ネットで検索すれば「走れメロス」は青空文庫で、「人質」はあるサイトで邦訳を読むことが出来ます)

しかし、このアニメの製作スタッフは有名なこのお話をそのままアニメ化するのは芸が無いと考えたのか作中の劇作家に書かせた劇中劇と言うことにしてその作家の過去のトラウマと対比させると言う捻りを加えた形に編集してきた。

したがって作品冒頭から題名でイメージしていた映像とはかけ離れた出だしだったので少々面食らったが、視聴していくうちに、まあこのような表現もありカナと言う感じでそこそこ引き込まれて視聴できた。変に独自の解釈でアニメ化されるよりはよっぽどましな構成だったと思う。
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第五弾である芥川龍之介の有名な「くもの糸」を視聴した

こちらは走れメロスの製作スタッフとは違い、話の骨子に手を加えることはあまりせず天才作家といわれた原作者の巧みな文章から感じられる多用なイメージを映像化することに専念したのだと思う

冒頭から幻想的な色彩配置や不思議な抽象的イメージで彩られていて原作の雰囲気をうまくかもし出してるなと感じながら最後まで飽きずに見ることができた

もちろん話の内容は知っていたがそれでも興味深く視聴できたのはやはり美麗な映像に引き込まれたからなのだと思う
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最後はこれも文豪芥川龍之介の地獄変だ

くもの糸の世界観をそのまま流用したような映像で同じ製作陣での作品となっている

原作を要約すると稀代の絵師が人間的な忌避感情よりも己の芸術的欲求を優先させる狂気の様を描いた短編小説なのだがこれもまったくの原作者オリジナルではなく中世日本の説話集「宇治拾遺物語」のなかに書かれている絵仏師良秀という短編が元なっている

芥川龍之介はこの「絵仏師良秀」という短編にかなりの脚色と独自の解釈を付け足して地獄変を書いているがこのアニメはその話をさらに改変して製作されているため、もはや元々の「絵仏師良秀」とは前述した要約部分しか同じ成分は残っておらずオリジナルストーリーと言ってしまっていいような作品だった

とりあえず一個のアニメ作品としては前回のくもの糸同様美麗な色彩と特徴のある表現などで別に「地獄変」と言う前置きしなくとも十分視聴できる圭作だったと思う

投稿 : 2012/06/13
閲覧 : 379
サンキュー:

7

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