ワタ さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
忘れたくない想い、ありますか?
並行して語られる2つの恋物語。
美麗な背景、叙情的な音楽、そしてシャフト独特の演出技法が群像劇を盛り上げます。
シャフト演出は確かにクドいところはあるけど、演出重視の人にとっては一見の価値アリ。
以下、個人的な感想
・みやこ―紘―景の物語
{netabare}景「お兄ちゃんの心から、あなたの存在を消してみせる」
これに拘りすぎたあまり、紘の携帯へのみやこからの着信99件の履歴を消去してしまったのが
景の敗着でしたね。もし紘がこれを見ていたら、結末は変わっていたかもしれません。
というか、みやこ-紘のストーリー上、紘はこれを見なくてはいけなかったんじゃないでしょうか。
シリーズ全体を通して「他者に踏み込む覚悟」が問われる話でもあるわけで。
みやこのトラウマ(負の部分)を直視して、それでも受け入れるという流れがあれば
「お前の居場所になる!」という紘の台詞も、もっとカッコよく、熱く響くものになったと思います。
この公衆電話のカウントダウンの場面は演出ゴリ押しって感じなんだけど、
声優の熱演や音楽の盛り上がりも凄まじく、うっかり感動させられたわけですが(笑)
7話の文字埋め尽くしの演出は正直震えましたね。
これも声優と音楽の力によるところが多いけど、シャフト史上最高の演出だと思ってます。
向きや大きさを変え、画面上に容赦無く上書きされていく文字列は
みやこの乱れた感情・内面そのものを如実に表しており、
この演出は決して奇を衒っただけのものではないと強く主張したい。{/netabare}
・千尋―蓮治の物語
{netabare}「記憶」について考えさせられる話でした。
記憶は性格(人格)を形成する上で、また自己同一性を保証する上で必需的な要素ですが
13時間しか記憶を保てない千尋にとって、過去の経験を記した日記帳こそが頼みの綱。
しかし日記から得られるのは所詮、実感を伴わない乾いた情報。
それ故に千尋は自身を客観的にしか見ることができない。
小説を執筆する過程で、蓮治が千尋に対して「何かが違う」と違和感を覚えていく様子は
千尋に記憶の障害があると知りつつも、普通の可愛らしい少女としか認識してなかった、
視聴者に対する痛烈なメッセージのようにも思えます。
ホラーチックな演出も相まって、非常に引き込まれる展開でした。
終盤の屋上での別れのシーン~2人の恋の結末までの流れも文句なし。
みやこ編では味わえなかった真の感動がそこにはありました。
この千尋編のストーリーは、シリーズ全体の中でも群を抜いてよくできている。
作中で執筆される小説の内容とも上手くリンクさせていたし、
「砂場の城」といった小道具の使い方も実に見事でした。{/netabare}