「魔法少女まどか☆マギカ(TVアニメ動画)」

総合得点
90.9
感想・評価
10596
棚に入れた
37490
ランキング
45

空色の猫 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 5.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

善悪・幸福・救済の意味を問う。

 子供が不思議な存在から強大な力を授けられて、世の中の悪や人類の敵と戦うという王道の勧善懲悪アニメに疑問を投げかけた作品。
 疑問で終わってしまうなら風刺・パロディで見かけなくもないが、きっちりとこの作品なりの主張・結論を導いているところが図抜けて評価が高い理由であろう。

 「鬱展開」だとか「キュウべえが極悪」とも言われるが、特に理不尽なわけでも、倫理に反しているわけでもない。この世界におけるルールにブレはなく、キュウべえは異なる価値観を持っているだけである。
 騙されたのではなく思慮が至らなかったという他はない。確かに詐欺的だが、もともと刑法どころか地球上の法則の外にいる存在に法の適用などできないし、そもそも法の源泉たる善悪の基準が違うのだから、「わけがわからない」のは恐らく言葉通りである。


 さて、魔法少女たちは基本的に個の人間としての幸福を追求しているし、周りの人間にもそれを与えようとする。そして、それこそが救済であり、それに逆らうものを滅ぼすことでその目的を達しようとしているところは、通常の物語と同じである。
 しかし、そこに個の幸福と全体の幸福は両立するかとか、永遠にそれを持続させることができるか、といった視点を加えていく。それだけなら類例がないこともないが、この作品ではそれをつきつめて宇宙全体の衰亡と天秤にかけるところまでいくのである。

 魔女という存在がいたり、幸福の総量が決まっているらしいとか、単純に現実世界に応用ができないとはいえ、そういうストーリー上不可避の設定は、最終話ですべて回収されて強いメッセージとして昇華されているので良いだろう。


 作画は日常風景と戦闘場面の強い対比、グロテスクさとファンタジックさ強引に混ぜたような印象的な絵柄。キャラ原画をほのぼのとした作風の蒼樹うめが担当するなど、絶頂から那落へ叩き落とす展開の多い本編と同じような悪趣味全開のつくりである。

 声優は幼い声が基本にありながら人物の精神的な成熟という意味で振り幅が必要なまどか・ほむら・マミに悠木・斎藤・水橋を起用して隙がない。キュウべえに加藤の中性的で柔らかい声というのもベタだが効果的だし、さやか役・喜多村と杏子役・野中も良く合っていると思う。


 既存の魔法少女ものという枠組みを壊すことなく利用して、一つ先の物語を紡いでみせたところが素晴らしい。換骨奪胎のお手本であり、奇抜でも外道でもないのに新鮮な作品。

投稿 : 2012/05/28
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サンキュー:

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