「紫式部 源氏物語 [1987年](アニメ映画)」

総合得点
67.2
感想・評価
10
棚に入れた
49
ランキング
2585
★★★★☆ 3.7 (10)
物語
3.8
作画
3.7
声優
3.6
音楽
3.8
キャラ
3.7

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橙色夜想曲 さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

いつまでも残して欲しい逸品

質・量ともに中古文学のみならず、日本文学史上に燦然と輝く、最高作品のアニメ化です。

眩暈すら覚えそうになるこの大きな仕事を前にして、
スタッフは相当思慮を重ね構想を練ったのでしょう。

源氏物語を実写化したものには、物語のテーマである「あはれ」を離れ、
宮廷における性描写にばかり焦点を当てた、興味本位で低俗なのものもありますが、
本作は決してそうではありません。

物語は桐壺~須磨までの序盤に絞り、
亡き母、桐壺の幻影を追い求めるように、数々の女性と愛を重ねる光源氏の青春を、
桜の舞い散る美しい映像と、細野晴臣のシンセサイザーによる心に染み入るような音楽に乗せ、
儚くも幻想的に描きます。

ストーリーの進行はかなり駆け足な印象ですが、無理もありません。
国文学科における中古文学の講義ですら、
須磨・明石のみを1年かけて学ぶような世界です。
桐壺~須磨となると一本の映画に収めるには厳しい分量ですが、
源氏物語全体の流れの中では、良い切りどころだったと思います。

源氏と交錯し愛を紡ぐヒロインは、葵・夕顔・藤壺・六条御息所・朧月夜。
どの女性も、身震いするほど美しく、素敵です。
最大のヒロイン、紫の上の成長した姿が描かれる続編が生まれなかったことが、
とても惜しまれます。

原画は、現代の竹久夢二と称される林静一。
ピアスをした源氏が話題になりましたが、決して原作のイメージを破壊するようなものではなく、
程好い現代アレンジが魅力的です。
素敵な原画集も、発行されました。

源氏物語のビジュアルな入門編には、
大和和紀による漫画界の大傑作「あさきゆめみし」がありますが、
本作もまた、源氏の世界へ誘われるきっかけとして、
いつまでも残して欲しい逸品です。

投稿 : 2013/07/22
閲覧 : 643
サンキュー:

5

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