みしょ さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
思春期のすべて、詰まってます
などというと言い過ぎですが、ある事件を発端として、理由も分からず襲い来る敵と戦いながら太陽系を漂流するという極限状態における少年少女の様子をあらゆる角度から描いた作品です。
中心となる登場人物は数名~十数名ですが、舞台となる宇宙船にはそれ以外にも数百名の少年少女がおり、事情により大人が乗り合わせていないためある種の無法地帯と化し、いろいろな事件が起こります。
一方で宇宙船の外に目を向けると、太陽系には各惑星を拠点とする人類の勢力がいくつかあるようで、それらの一部が少年少女たちの乗っている宇宙船を攻撃してきます。
そのような状況下で宇宙船を操縦・指揮する立場にある主人公たちは悩み、傷つき、翻弄されていきます。
そんな主人公たちを中心に他の多くの少年少女たちにもスポットを当てながら描かれる感情は喜び、悲しみ、怒り、憂い、不満、焦燥、希望、絶望、欲望、妬み、殺意・・など枚挙に暇がありません。
できれば自分も10代の内に見ておきたかった、それくらい10代の心理、ひいては極限状態における人間の心理をうまく表している作品なのではないかと思います。
また、この宇宙船は子供たちだけで構成されるひとつの社会と言えますが、これは現実世界におけるどこかの国や社会、あるいは日本の縮図という側面も持ち合わせているのではないかという印象を受けました。
統治する側・される側がおり、どちらにも派閥・勢力があり、政権が二転三転する。それに無関心な者、現状に不満があるが自分では何もせず文句だけ言う者、統治する側にありながらその権力を濫用する者などもいる。そして外敵の存在。まさに実社会の縮図ではないかと思いました。
なお、ロボットも登場しますがド派手な戦闘はありません。あくまで上述したような心理描写のために一部の登場人物をより際だたせるよう使われていると思われます。
また、物語の発端となる事件の経緯や背景が自分にはいまいちピンと来ませんでしたが、やはりあくまで極限状態における10代の子供たちの心理を描いた作品であり、凝った設定の純粋なSFロボット作品では全くないと理解して見ることをおすすめします。