「ニニンがシノブ伝(TVアニメ動画)」

総合得点
64.9
感想・評価
178
棚に入れた
822
ランキング
3644
★★★★☆ 3.7 (178)
物語
3.4
作画
3.4
声優
4.1
音楽
3.4
キャラ
4.0

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ネタバレ

レトスぺマン さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 5.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

エロギャグに特化した「お江戸でござる」「バカ殿」をやりたかったんだなと…

本作はアニメ制作スタジオufotableの元請2作目ということで、もはや放送から20年以上経つものである。

だから今となっては古い作品ではあるのだが、世代的なもの含めて私にとってはこれくらいの萌えキャラデザインが丁度良いと感じる。
そして、ufotable×TYPE-MOONとの共同制作が開始される2007年以前というだけあって、試行錯誤感や作品表現における自由さがかなり目立つものとなっている。
それがufotableの他作品と比較して突飛に出ているのが本作の良いところだろう。

本作のストーリーは見習い忍者である「忍」と忍者学園い組の頭領である「音速丸」。
そして女子高生の「楓」にそれらを取り囲むようなキャラクター達との掛け合いを楽しむコメディ作品である。

まず、アニメーション部分についてはufotable元請1作目である「住めば都のコスモス荘」と似たような絵柄ではあるが、コメディアニメであるからかキャラクターの動きがとても良い。
エロギャグはどうしても人を選びそうなところではあるが、余計なことを考えず頭を空っぽにして子供心ながらに楽しめばあまり不快感を感じることがないのも良い。

セリフ回し以外でも小物の扱いで笑いを取りに行く描写が徹底されていたことも印象的である。
例えば、忍者学園の掛け軸の文字が「酒池肉林」であったり、神社の名前が「玉乃神社」といった様子だ。
これは原作からの引用もあると思われるが、これらの文字を見ただけでその話でどのようなギャグが展開されるのかがわかりやすい。
このように肝心のギャグが始まる前の時点で視聴者を笑わせにきていることは、なかなかに計算高い製作がされていると感じた。

そして原作では忍の鉢巻きに書かれている絵柄は「スマイルマーク」で固定されているが、本作ではアニメだけあって忍の表情と連動していたりと細かい。
くだらないギャグとキャラクターのわかりやすさは所謂「子供向けアニメ」に通ずるものがあるが、本作の良さとはそういったアニメとオタク向けアニメの中間を狙っているところだとまず思えた次第である。

本作の最も面白い点はやはり声優界の大御所でもある若本氏が演じる「音速丸」のエロギャグセリフであるのは間違いないでしょう。
若本氏といえば、個人的には硬派かつダンディズム溢れるキャラクターを演じられている印象が強かったが、そのギャップを狙っているのか音速丸のようなキャラクターでも意外と合うことに驚かされる。
若本氏は2018年放送のポプテピピックでもコミカルな役柄を演じられているが、おそらくその配役となったのも本作が影響している可能性が高いわけだ。

また、若本氏以外の声優陣も必見であり、こちらに関しても相当興味深い事柄が見つかった。
例えば忍のキャラクターを演じる水樹奈々さんは本作が初主演であり、作中でかかる「シノブ音頭」で素晴らしい歌唱を披露されている。
ここで一つ思うのは、アニメの劇中歌というものは本来であればポップス寄りの曲でも萌えソングでもよいわけだ。
しかし、水樹奈々さんといえば元々は演歌歌手を志していたことは有名であり、余計な勘ぐりをするならばそこからの流れで劇中歌が盆踊り(=つまり広義の意味での演歌)になったのではないかとも思えてくる。
また、本作の題材である「忍者」と「盆踊り」「演歌」からイメージするものは日本の原風景そのものであり、これらを掛け合わせること自体相性が良い。
そこへさらに「笑い」が加わればそれは立派な「コメディーお江戸でござる」ないし「バカ殿」よろしくな作風となるわけだ。

そして、楓役の川澄綾子さんもそれまでであれば「安藤まほろさん」のようなおしとやかすぎるキャラクターや、神無月の巫女の「千歌音」のようなミステリアスなキャラクターといった感じである意味クセの強い人物を演じて来られた印象である。
ところが本作は比較的まともな女子高生を演じるというだけあって、これは若本氏と同じくギャップを狙っている節もあるのではないか。

最後に忍の妹である雅ちゃん演じる釘宮理恵さんも本作のセリフで「シャナ」や「ルイズ」に繋がるツンデレキャラの片鱗が見える部分がいくつもあった。

まとめると本作は
・声優さんが持つ本来の良さの引き出し、今後得意とするキャラクター像を決定付けさせること
・それまでの演じることが少なかったキャラクターを演じさせることで声優さんの更なるキャリアアップにつなげる
といった目的を広範囲に渡って行っている節があるのではないかと思った次第である。

そこから考えると本作がufotable初期5作(コスモス荘、シノブ、フタコイ、コヨーテ、まなびストレート)の中で最も愛されている理由もわかる気がする。
それは、頭空っぽで楽しめるギャグの面白さに加え、物語としては直接出てこない裏事情を視聴者なりに感じられる良さがあり、そしてその素晴らしさに思わず乾杯(完敗)してしまう心情そのものだったわけだ。

投稿 : 2025/03/03
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