Witch さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 3.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
国王としての責任ある決断 →B級作品だが愛すべき一流のB級作品
【レビューNo.172】(初回登録:2025/3/2)
ラノベ原作(なろう発)で
・第1期:2021年作品。全13話。
・第2期:2022年作品。全13話。
一応リアタイで視聴してましたが、本作もちょくちょくABEMAで一気見配信
されているので、タイミングが合えばなんだかんだと観てしまう作品ですね。
(ストーリー)
主人公・相馬一也(ソーマ)は19歳の大学生。堅実に公務員になることを考
えていたが、ある日異世界の超大陸ランディアにあるエルフリーデン王国に
勇者召喚されてしまう。
エルフリーデン王国は慢性的な財政難にあえいでおり、強国グラン・ケイオ
ス帝国に(魔族と戦うための)支援金が払えないため、勇者召喚を行いそれ
を差し出すという代替案にすがったのだった。
帝国に引き渡されると不安に感じたソーマは「富国強兵」を声高に唱えその
場を凌いだものの、今度は王位を譲位され国の再建を押し付けられることに
なる。
こうしてソーマの異世界での王国再建記が始まるのだった。
(評 価)
・B級作品だが愛すべき一流のB級作品
率直にいえばB級感に溢れる作品ではあります。
・作画等から滲み出る低予算感
・特殊能力で「俺tueee」するわけではないが、若干19歳の若者が現実世界
での知見を駆使して様々な分野で成果をあげていくご都合主義感
でも本作の評価すべき点は
・制作陣はやれることをしっかり頑張っていると感じる
・原作者も自分の描きたいことをしっかり描いていると感じる
「B級作品だが愛すべき一流のB級作品」と感じるところなんですよね。
例えばこの手の作品だと、国家間の紛争といったところに力を入れがちな作
品が多いですし、本作も内乱やそれに乗じた他国の介入等が描かれています。
しかし本作の真骨頂はその後の戦後処理や講和会議・外交にあり、その辺が
面白く描かれています。
また「王国再建モノ」ということで、王道的な
・財務再建
・道路網の構築や新たな都市建設等のインフラ整備
・軍事再編や強化
・食料問題
を始め、国家の根幹をなす上で重要な
・医療衛生の推進
・教育改革
・防災・災害救助
・変わったところでは奴隷制度や難民問題
といった地味なテーマも、この原作者なりにきちんと世界観を熟考した上で、
上手く物語に落とし込んでいるなっと感じます。
あとこの作品独自の「宝珠放送」という仕掛けが面白く
(魔法による国営TV放送的なもの)
この仕組みのおかけで
・優れた人材発掘の呼びかけ
・(食料問題の暫定対策として)変わった食材を紹介する料理番組
の4話位までは、サクッと観れちゃう感じですね。
(あと国民に娯楽を発信して、自由さをアピールする戦略も面白いですし)
ただ2クールという尺を持て余し気味だと感じる部分はあるかな。
異世界要素の閑話的な話がちょくちょく挟まれるのですが、これは好みが
分かれそう。
しかし最後に{netabare}(突然の王位譲位という){/netabare}最初の伏線も綺麗に回収されて、
キリのいいところまでアニメ化してくれたのは高評価。
・国王としての責任ある決断
個人的に本作の一番の魅力は
・国王ソーマがこの国の未来像をしっかり描き
・それを実現するために「国王としての責任ある決断」を下していく
その様がきちんと描いているところだと思います。
本作は政治思想家マキャヴェッリの「君主論」をベースに描かれているので
すが、その中では「『残虐』の有効な使い方」について触れているように、
時にソーマに非情な決断を迫るシーンも描かれています。
最初は「腰掛程度」にしか考えていなかったソーマが、愛する者や守るべき
仲間や民を得てこの国の理想のために邁進していく、そこに本作の面白さが
あるのかな。
特に今の日本の政治の凋落ぶりをみると余計にねえ・・・だから
「物語の中で位、責任ある者がしっかりとその任を全うし、理想的な国家再
建する様が描かれてもいいじゃない。」
と、思わせてくれる作品なのかなっと。
・女性キャラはロロアがよかった
女性キャラは王位を譲位された時に、前国王の一人娘リーシアとの婚約も
発表され、その後も異世界モノらしくハーレム的な展開もあるのですが
・皆キャラデザも悪くはないのだけど、平凡で”華”や”萌え”がない
性格等キャラ描写も無難
(作画もたまに怪しいところが・・・)
・ソーマが奥手っぽい
それに政務室に寝泊まりするようなワーカーホリックぶり
ということで、色気もなにもねーなっとw
(一応「頑張ってそういうシーンも入れました」的なものはありますがw)
・そんな中でもロロアはキャラが凄く立っててよかったかなっと。
・愛くるしい少女キャラで敵国の姫だったが、ソーマの才能に惚れこみ押し
かけ女房に
・抜群の経済センスを持ち、商才も豊か
(また国を憂いて暗躍する等の策士ぶり)
それを演出するような M・A・Oさんの関西弁がピタリとハマる
特に”智”においてはソーマの独断場であったので、彼と対等に渡り合える
彼女は2期では貴重な存在でしたね。
惜しむべきは出番が少ないところですが。
あとジュナさんの
{netabare}「姫様が強さを引き出すなら、私はあなた様の弱さを隠します。」{/netabare}
は”癒し枠”として、なかなかの名言だったかな。
全体的に真面目に内政モノをやってるって感じなので、この辺はまあご愛敬
ということでw、
上述のようにキャラ萌えやド派手な戦闘シーンといった分かりやすいエンタメ
性に欠け、地味な内政モノを中心に描いていくので、好き嫌いははっきり出る
作品ではあります。なろうらしいご都合主義もありますし。
でも原作者の描きたいことがはっきりと主張されているので、個人的にはつい
何度でも観てしまう「愛すべき一流のB級作品」という評価ですね。
(なんやかんやで見返す度に、原作者の細部のこだわりが垣間見れますし)
またナレーションが速水奨さんなのも、いいキャスティングでしたし。
今のアニメって結構「圧倒的な勝ち組」と「アニメ化だけが目的の負け組」に
2極化してきた部分があると思うので、こういう
「制作陣が入れ込み、面白いかどうかやってみなければ分からない」
的な中間層アニメが増えればなあっと思いますね。