山の翁 さんの感想・評価
3.6
物語 : 4.0
作画 : 3.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
「前作とは別物」と割り切れば良作
【本作だけでなく前作のネタバレも含むので注意】
本作は、イタリアを舞台に、身体の一部を義体化(機械化)され、暗殺を含めた特殊任務に従事する少女たちを描いた作品(GUNSLINGER GIRL)の続編です。
1期に比べると評判の悪い本作ですが、自分も当時は「コレジャナイ感」が拭えず、序盤で脱落しました。しかし、今回改めて視聴したところ、作品自体は意外としっかり作られており、もっと評価されても良い作品だと思いました。
1期では、義体少女と担当官(上官でありパートナー)との交流を通じて、少女たちの過酷な運命が描かれました。義体化はまだ発展途上の技術であるため、少女たちは長く生きられない身体であることが度々示唆されています。
また、少女たちが所属する組織は「社会福祉公社」という名称ですが、実態は汚れ仕事を請け負う国家の暗部です。少女たちは「条件付け」と呼ばれる洗脳が施され、任務に忠実な戦闘人形としての役割が課されています。
もっとも、条件付け(洗脳)が施されているとはいえ、少女たちは感情や思考能力を失っているわけではありません。年齢の割に達観しているところはありますが、普段は子供っぽい姿が描かれたり、感情の機微を見せたりもします。
そして、義体担当官の方でも、このような運命を背負った少女たちへの接し方に思い悩む姿が描かれました。
本作は1期の続編ですが、作品の雰囲気は大きく変更されており、視聴者にとっては下記のような点が違和感(不満)となったようです。
①眼が大きく描かれたり、前作より幼く描かれるなどキャラデザが大幅に変更され、キャラによっては別人のようになった。
②声優がほぼ入れ替えとなり、キャラデザの変更と併せて、誰が誰だか分からなくなった。
③声だけでなく演技指導も変わったのか、少女たちの感情が豊かになり、前作のような悲壮感がなくなった。
④1期のラストで安らかな死を迎えた(と思われた)アンジェリカがピンピンした姿で登場し、視聴者を困惑させた。
⑤フランカやピノッキオなどパダーニャ(五共和国派)の視点で描かれる話が多く、主人公サイド(社会福祉公社)の描写が減った。特にトリエラ以外の少女たちは出番が大幅に減少した。
実は、義体少女たちのキャラ付けを含めて、1期はオリジナル要素が多く、ラストでアンジェリカが亡くなるシーンもオリジナル展開でした。
視聴者からの評価が高かった前作ですが、原作者はこれらの改変に不満を感じていたようで、2期は制作会社を含めてスタッフが総入れ替えとなり、声優もほぼ変更されました。更には、原作者がシリーズ構成と全話脚本を担当するなど全面的に作品を監修し、『原作準拠』で制作されました。
しかし、多くの視聴者が望んだのは「1期の続き」であったため、作風が大きく異なる本作は、批判的な評価を受けることとなりました。
今回、本作を視聴するにあたって、改めて1期から見返しましたが、やはり序盤はキャラデザと声優の変更に大きな戸惑いを感じました。
しかし、回を追うごとにこの作風にも慣れてきて、「ガンスリンガーガールというのは本来こういう話なんだ」と思うと、「これはこれでアリ」と思えました。
作画はあまり良くなく、アクションシーンも迫力が今一つですが、キャラクターは可愛くなっており、フランカやプリッシラなどはかなりの美人になっています。
また、施設内の描写が多かった1期と比べ、観光名所が舞台となっているシーンが増えているので、観光気分が味わえるのもポイントです。
本作は、凄腕の殺し屋であるピノッキオとトリエラとの因縁(対決)がストーリーの主軸ですが、前述のとおりパダーニャ(五共和国派)の視点で描かれるシーンが多く、ピノッキと、その親代わりであるクリスティアーノ、フランカとその相棒のフランコなどが主要人物となっています。
ピノッキオは、幼い頃に自分を救ってくれたクリスティアーノへの恩義に報いるために殺し屋になっていますが、近接戦闘に長けており、トリエラを失神KOするほどの高い身体能力を誇ります。
洗脳はされていませんが、生き方を選択することが出来ず、命じられるままに暗殺任務を遂行するさまは、義体少女の境遇と重なって見えます。
一方、フランカは相棒であるフランコと共に、爆弾をメインにテロ活動を行っています。学生時代に理不尽な理由で父親を失ってから国家に対する恨みを抱え、テロ活動に身を投じています。
テロリストではあるものの、「不必要な殺しはしない」主義で、作中では心優しい良識的な人物として描かれています。
「爆弾テロ」という無差別殺人の典型のような行為を行いながら、善性を失っていないことには疑問を感じますが、この辺りは割り切って視聴しました。
前作のような重苦しい雰囲気はなく、アニオリに起因する「テーマの違い」はありますが、本作でもストーリーの根幹はしっかりしていた印象です。
主人公サイドと対立する人物であっても、記号的な悪役ではなく、その背景や心理描写などが丁寧に描かれています。テロ行為などは認められるものではないですが、テロリスト側の視点で描かれることに不快感はありませんでした。
むしろ、社会福祉公社は幼い少女を改造・洗脳して、汚れ仕事の手先として利用するという「悪の秘密結社」のような存在であり、洗脳を施された少女たちは何の躊躇いもなく人殺し任務を遂行しているので、どちらが悪役か分からなくなります。
個人的にも、作品としての評価は1期の方が高く、テーマや(義体少女たちの)キャラクターの違いが受け入れられなかった視聴者が大勢いたことは理解できます。
しかし、「1期とは別作品」と割り切って視聴すると、意外と楽しめるのではないかと思います。