「ひるね姫 ~知らないワタシの物語~(アニメ映画)」

総合得点
67.2
感想・評価
155
棚に入れた
580
ランキング
2608
★★★★☆ 3.5 (155)
物語
3.3
作画
3.8
声優
3.3
音楽
3.5
キャラ
3.5

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ネタバレ

トロール夢民 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

驚いた

巨大企業内の政治的対立に巻き込まれた父親を救うために娘が立ち上がり、友人と共に最先端のテクノロジーと特殊な夢見の能力を駆使した冒険の旅に出る
表現に独特な工夫があり、観測地点があやふやになる構造だが、物語の本筋は明快でシンプルだ
作中では、新鋭の先端テクノロジーに対して、開かれた心を持てるかどうかが争点となっている
アニメーションならではの魅力が詰まった作品で、壮観な風景と、たくさんの動きやアクションがある
開始直後から面白かった
プログラムによって命を吹き込まれた人形が話し始め、少女と一緒に何だ良く分からない世界で冒険を開始する
なんて素敵な導入だろう」と、心の奥底にあるピュアなハートがときめいた
幻想的なサイドストーリーと現実的なメインストーリー、この2つの物語が並行して進み、互いに干渉し合う
こうした構造の作品は観ていて混乱が生じやすく、日常生活では馴染みの無い頭の使い方を強いられる
そこには『パプリカ』や『インセプション』などに通じる面白さがあり、私はそうした作品が大好きだ
物語の途中までは、真の主役は母親であり、娘ではない
娘と父親は、亡き母(妻)の願いを成就させるための駒として動いている
このことが中盤まで隠されていて、それが明らかとなる瞬間には、身震いを伴うほどの感動があった
これはまさしく、嬉しい誤算だった
天才の母、職人の父、老害の祖父
そこへ屈託のない娘が現れ、これら癖の強い人物らを結びつける優秀な媒介者として機能する
一見、この娘は作中で最も愚鈍に見えてしまいがちだ
しかしその実、作中での彼女が、仕組みや原理を知らなくても当たり前のように初めて触れるガジェットやハードを使いこなしているところに注目したい
娘は、先端テクノロジーに抵抗を抱かず、物事を感覚的に理解する能力に長けている
即ち、この娘は「スマホネイティブ」の第一世代として描かれているのだ
また、序盤に登場した軽トラに乗った老人は、先端テクノロジーに疎いアナログ世代の代表格だ
ここに世代間の対比が示されている
両者を単純に比較し、どちらが優れているかを論じることほど不毛な議論は無い
両者は出発点が違うのだ
ここで問われるのは、一人一人の態度であり、新たに生まれた選択肢にどう向き合うか、ということだ
強制されず、個人の選択の自由度が高い政治体制を前提とした場合、世の中には選択肢が多いに越したことはない(増えすぎた選択肢は市場原理により淘汰される)
開発の分野において新たな選択肢の創出を拒む姿勢は、未来を生きる人間にとっての機会損失に直結する
だからこそ未来に目を向ける人々は、技術革新を拒む旧態依然とした勢力と、戦う必要があるのだ
本作で描かれる戦いの本質はここにある
作中の企業内権力抗争は、ドラマを面白くするためのマクガフィンに過ぎない
作中の母親と父親は、次世代(娘)が豊かに暮らせる未来を守るため、祖父と対峙する道を選んだ
祖父は未来の顧客となる孫娘と出会い、商いの本質を再確認するに至る
変化を恐れて硬直化し、緩やかな衰退へ向かう企業のトップが、直接エンドユーザーの実情から学び、本来の理念に立ち返った瞬間だ
そしてある夏の日、軒下に並んで座り、スイカを一緒に食べる祖父、父、娘の3世代が描かれる
そこで彼らが語り合うのは、母が夢見た、これからの先の未来の話だ
なんて素敵な幕引きだろう
現実を見据えてなお、夢と希望を抱いて未来への展望を描いている
清々しい、素晴らしい映画だ

投稿 : 2025/02/15
閲覧 : 17
サンキュー:

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