トロール夢民 さんの感想・評価
1.7
物語 : 1.0
作画 : 4.0
声優 : 1.5
音楽 : 1.0
キャラ : 1.0
状態:観終わった
衝撃のラスト
酷い映画だ
主人公は、自分の思い通りにならないと不機嫌になり癇癪を起こす、甘ったれた環境で育ったクソガキそのものだ
人を見下す実力の伴わない自信家で、謙虚さの欠片もないため成長する機会も得られない
そうした主人公の不遜な態度を諭す、模範となる人物が登場しない
未熟な人間しか登場せず、成熟した大人は一人も出てこない
声の芝居に松平健氏を起用した年長者のキャラクターを、老害としてぞんざいに扱い活躍の場を与えずに終えるシナリオは、悪意に満ちている
これでは、本作の物語は視野の狭い浅はかな内容にならざるを得ない
井の中の蛙大海を知らずとは、まさに本作を的確に言い表す言葉だ
それでいて、空の青さを知る人と冠す太々しさ・図々しさには呆れを通り越し、感動すら覚える
プロギタリストとして登場する30代の男も、最低な人間性を有している
男は故郷に戻り、かつて恋仲にあった女性と再会
密室で二人きりになった直後、女性の両腕を乱暴に掴んで暴力的に振る舞いレイプを試みる
驚くべきことに本作では、このような非道かつ野蛮な行為を「大人の恋愛」の一例として描いている
情けない話だ
この映画の作り手は、強姦・強制わいせつ事件の約8割が、被害者の知人によって起こされているという統計的事実を知らないようだ(平成26年「男女間における暴力に関する調査)
もちろん、何をどのように表現しようと作り手の自由だが、本作から窺い知れる作り手のレベルの低さ・貧弱な知識・狂った倫理観には甚だ呆れるばかりだ
残念なところは他にもある
それは、主人公が演奏するベースには、何の魅力も無かったことだ
グルーブもポケットも無い、ダラダラ間延びした音でブリブリと放屁のようなノイズを発しているだけの、最低な演奏だった
作中では、主人公の演奏に対し「おお!うめえなあ!」「やるな~」とモブキャラに称賛させていたが、何のフォローにもなっていない
却って、こいつらどんだけ腐った耳してやがんだ?と突っ込みたくなる滑稽な演出に成り下がっている
作中の演奏の音源制作は、もっとまともな演奏ができる海外ベーシストにオファーした方が良い
しかしそもそものアレンジがダサいので、ベーシストだけ優秀な人材を確保したところでどうにもならないだろう
作り手が映画内のベース音源に拘らない理由は、作り手自身が作中の演奏内容に全く価値を置いていないからだ
彼らにとっては、鳴っている音などどうでも良く、作中に演奏描写が記号として配置してあれば、それで十分なのだ
早い話が、作品を彩る「お飾り」として「見た目の可愛らしい女子がデカいベースを弾いている絵」が欲しかっただけなのだろう
つまらない人間たちのケチ臭い色恋沙汰を延々と垂れ流すにあたり、時流に乗ってバンドと音楽の要素を作品に取り入れてみただけなのだ
そうした不純な動機で物語に組み込まれた音楽要素は、当然のように作品内で軽視されることになる
町内会イベントでのバンド演奏」が、映画の中盤までは物語の中心的役目を担っていた
しかし、中盤以降は急激に重要度が低下し、終盤では完全に忘れ去られ、最終的には町内イベントの模様が一切描かれないまま映画が終了した
何もかも面倒くさくなったのか、とりあえず男女で空を飛んで終わらせてしまえばいいという、投げやりな態度で映画が締めくくられている
まるで、戦いの途中で連載が打ち切られた少年漫画のような終わり方だ
観る価値が無いどころか、失望と落胆による損失を被る、観る意味の無い映画だ
本作の物語にバンドや楽器は必須ではなく、客の食いつきが良さそうなら、囲碁や将棋、演劇や落語、サーカスやチンドン屋でも、何でも良かったのだ
完全に観客を舐め切っている、やる気の無い、くだらない作品だ