トロール夢民 さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
面倒くさい鬼
この作品では、ハイテク民間警備・軍事会社ボーダーの隊員たちの日常や訓練、異世界人との戦闘を描いている
隊員たちは自主性、自律性、創意工夫が求められる環境で互いに競い合い修練を積む
幅広い年齢の人物が数多く登場するが、一人として無駄な人物はいない
物語に引き込まれ、劇伴の構成と次回予告の演出が私を虜にした
第1シーズンは73話あり、どれも面白い
数年ぶりに最初から観かえしてみて、結局全話観てしまった
トリガー起動(オン)
観始めてすぐに素朴な疑問がわいた
なぜ民間企業ボーダーは事業を維持できるのか?
この作品は説明や解説が多いのが特徴だが、組織を維持する経営基盤や社会制度についての説明はほとんどない
視聴を快適にするため、私は次のように考えた
作品世界では、地方分権化がうまく機能しているように見える
例えば、作中で物語の舞台となる三門市が異世界人に襲撃されても、行政は動かず、民間企業ボーダー社に治安が委ねられている
有事の際にはボーダー社が自律的に行動でき、中央政府の指示や許可が下りるまで行動できないという様子はない(これは『アクティヴレイド -機動強襲室第八係-』の状況とは正反対だ)
このことから、物語の舞台である三門市は、政府機能が縮小し、規制緩和が進んでいることがわかる
そして間違いなく、三門市は財政的に潤っている
三門市はボーダー社に防衛を任せつつ、ボーダー社から莫大な税収を得ている構図が浮かび上がる
異世界人に攻撃される危険に常にさらされながらも、ほとんどの市民は三門市から離れようとしない
その理由は、三門市の税金が他の自治体に比べて異常に安いからに違いない
人や企業は税金が安い場所に移り住み、規制が緩い場所で経済活動が活発になる
異世界人に襲撃されるリスクを除けば、三門市の税制と生活環境は健全かつ快適であるようだ
作中では、ボーダー社にスポンサーからの出資あるいは寄付があることが明かされている
しかし、作中では語られていない収入源があるのではないかと思えてならない
例えば、ボーダー社は基幹産業やインフラに関わる特許を保有しており、そこからべらぼうな収益を得ているのかもしれない
もしそうであれば、資本金を調達することは容易であり、開発や人材育成、設備投資に十分な資金を安定的に確保できるだろう
このような背景があれば、膨大な運営費がかかることは明らかなボーダー社のような組織が、政府から独立して維持・運営できていることも納得できる
私がこうした考えを巡らせるのは、そうあってほしいからだ
ワールドトリガーに登場する民間企業ボーダー社が、補助金や規制による参入障壁を悪用した利権を貪るシロアリ企業であってほしくない
それではあまりにもロマンに欠けている
ワールドトリガーには、古典的自由主義の息吹が感じられる作品であってほしい
こうした個人的な願望がバイアスとなって、こじつけに等しい解釈に至った
あるいは、説明や解説だらけのワールドトリガーを連日観続けていたせいか、自分も何か説明めいたことを書いてみたくなったのかもしれない
ワールドトリガーは、なかなかに影響力のある作品だ
しばらくは私の頭の中で、本作次回予告時のサウンドが鳴り続けるだろう