nyaro さんの感想・評価
3.5
物語 : 2.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
良くできているけど深味も意味も希薄。クリスと作画だけかなあ。
本作の作画クオリティの高さはやはり80年代のOVAでしかもスタッフが一流ですから、見ごたえがあります。今と比べて作画に安定感はないですが、表情や髪の動き、陰影などがゴージャスです。そして、クリスティーナ=マッケンジーは可愛い。さすが美樹本晴彦氏です。全体的に、ガンダム+マクロス+パトレイバーですからね。ロボットアニメのオタクパワーの総決算です。
ただし、やはり富野ガンダムと比べて、スケールが小さいなあという印象です。サイド6の少年と諜報・潜入活動をする軍人の友情の話ですから当然と言えば当然です。スターウォーズで言えば「ローグワン」と言いますか、一度見る分には面白いけど広がりがありません。
ファーストガンダムのサイドストーリーとしてガンダムの開発の裏側を見せるという目的もあるでしょうけど、それは単なる設定です。モビルスーツオタクは興味深いとは思いますが、深いテーマはないです。
戦争の一部を切り取ったヒューマンドラマとして成立はしています。そこは悪い脚本ではないです。少年を挟んでのクリスとバーニーの小さな物語はまさに「ポケットの中」です。ですが、令和の今、もうアニメのヒューマンドラマのレベルはかなり上がっています。あくまで当時の短編としてなかなかいい出来という程度です。
セキュリティの問題などご都合主義が多いです。80年代のリアリティラインは、例外はありますがほぼこんなものでしょう。
クリスがフィーチャーされがちなので、もっとストーリーに絡むかと思うと、隣の綺麗なお姉さん系のお色気要因でしかないです。内面は定義できる程度の情報量はありましたが、さりとて彼女に感情は乗せられません。テストパイロットとしても設定上は重要でも物語上の意味は薄いです。最後のバトルも彼女である必要は宇宙世紀的にはないです。もちろん3人の関係性のドラマにはなっていますが、なんとなくこのドラマの意味が希薄なんですよね。感動ポルノといってもいいかもしれません。戦争の裏側の小さな悲劇としてビデオレターは良かったですけど。
淡い恋愛要素もなくはないですが、80年代だからちょっとは入れました程度です。
全体として、よくできたスピンオフ、サイドストーリーですが、当時のオタクたちの社会性・人間性表現の視座の低さは隠しようがないです。テーマもメッセージも物足りないです。
(追記 いや、作品としてのヒューマンストーリーが類型的すぎるというか…視座が低いと言うより「アニメ作品の水準」のレベルにとどまっているというか…分かりやすい2人の友情を中心とした戦争悲劇のドラマなので、物足りないと言った方がいいかも。何度も何度も見たくなる含意が隠れている感じがしないというか…逆に言えば良く出来てはいるんですけど…)
このOVAのせいで「F91」以降「F92」などが作られなくなったと聞きます。一連のガンダムOVA。アニメ史的には本当にもったいなかった。このスタッフで富野ガンダムを作ってればなあ…